所在地 : 愛知県名古屋市緑区大高町字平子36 |
土地区画整理事業によって生まれた街に計画された医療生協による313床の総合病院である。一般的には閉鎖的になりがちな医療施設ではあるが、敷地を対角線に横切るように設定された動線に、外来受付だけでなく店舗が配置され、土地のレベル差も活かしながら駅と病院、住宅地が上手く接続されている。 病棟が入る7層の高層棟は、病棟各階の看護効率の点から三角形平面となっている。ともするとその外形が街並みにフィットしないことが懸念されるが、三角形の長辺方向が先述の動線と一致させる形で配置され、また低層部が高層棟下部に回りこむ構成になっており、病棟部の外壁部のデザインの工夫もあってあまり意識されないでいる。 内部空間について、病室はほぼ半数が個室であり、残りも個室的多床室で計画されたが、ベッド周りに看護や生活上のスペースが十分に確保されている。外来部も動線と待合空間が柔らかく分節されており、雑然とした雰囲気になりがちなところを上手くコントロールしている。 この病院の計画に際しては、院内外の関係者を集めた検討会を50回近く実施して、どんな病院をつくるのかについて議論を重ねている。ユニバーサルデザインの専門家も参加して、サインや床のパターンなど病院各所の事前検討がなされた。病院部分とともに商業ゾーンの内容についても、単に店舗を入れるのではなく、病気への回復や予防、健康、また病院従業員の利用やリフレッシュなどの点からも検討された結果として実現している。その成果は、患者や地域住民だけでなく、医師や看護師など病院関係者も多く利用していることや、診療や治癒という場面ではない医療関係者と地域住民の交流が行われていることが証明している。 関係者の企画力とその思いに応えた設計者の力量によって、地域社会の日常とつながった医療施設が誕生したことを共に喜びたい。 |
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(小松 尚)) | |||||||||||||||||||||
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