所在地 : 富山県砺波市中央町8番23号 |
砺波市の前身である出町の曳山は天明9年(1789)に西町で造られたのをはじまりとし、後に中町・西町と三町で造営された。西町の彫の深い彫刻美、中町の金・銀・朱を施した華麗さ、東町の金を基調とした豪奢な意匠と、いずれも往時の繁栄と伝統技術を現在に伝える文化財であるとともに昭和42年に富山県指定無形文化財として登録された「出町子ども歌舞伎曳山行事」を支える総合演芸舞台として今なお現役で活躍している。 出町子供歌舞伎曳山会館は、伝統ある出町商店街を中心とする「中心市街地」と観光戦略の拠点であるチューリップ公園を中心とした「新市街地」との接点に位置するとともに、両地域を結び一体化させ観光客の回遊性を高める都市計画道路(杉木花園町線)と出町商店街の目抜き通りとの交差点に立地している。地域の伝統と新しい文化の結節点にして地域住民と観光客を結び都市のアイデンティティを再構築する「中心市街地活性化の拠点施設」としての役割を期待された会館である。 会館は、東側に煌びやかな衣裳・小道具類の数々を展示公開し、三基の曳山の周りをワンウエイで大きく旋廻する緩やかな階段と一体となった「曳山展示室ゾーン」と西側に出町浄瑠璃をはじめ民謡や謡曲などの地域住民たちの練習や発表の場となるレトロな芝居小屋風の意匠が特徴の「砺波座ゾーン」、さらに二つのゾーンをつなぎハレの祭り日にはS造の大庇の下に曳山三基を包み曳山巡幸の出発を演出する「曳山広場」と一体となった透明感のある解放的な「エントランスゾーン」からなる。外観は住宅地と隣接することを配慮して水平的な意匠を効かした落ち着いたモノトーンのファサードに仕上がっている。各ゾーンの空間特性に適した構造と空間表現に適した材料の選択、伝統芸能を内包する器ではあるが伝統に迎合せず、敢えてシャープな意匠を基調とした現代的な造形感覚でまとめられた秀作である。 |
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(熊澤 栄二) | |||||||||||||||||||||
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