所在地 : 静岡県富士宮市粟倉1618-9 |
「富士山環境交流プラザ」は、富士宮市街地から表富士登山道の5合目まで登る富士山の南斜面の中腹の近年工業団地として分譲開発されている山宮地区の一角に位置する。もともとこの地域の開発を請け負った業者が、工業団地の管理事務所として富士宮市に寄贈する目的で計画された。後に、富士山をバックに借景する好条件の立地と、森林地域の環境を生かし、地域のNPO法人他の意向もくみながら、自然との共存を計画理念とし、富士山の自然に触れることを楽しむ活動の拠点として「風.空気を感じる」環境デザイン建築をテーマに計画された建築となった。現在は富士宮市が運営を管理し、芸術、自然、地域の文化活動の拠点となるべく積極的な活動を試みている。建物は1階がRC造、2階が鉄骨造で、2階のガラス面に鋭角の三角形の屋根が軽快にかかり、富士をバックに飛翔するハングライダーのイメージを取り入れたシャープなデザインとなっている。配置は南と西面に沿ってL型に閉鎖されていて、Lに囲まれた北東側に広場が広がる。アプローチは広場への通り抜けるように南側道路からすることになる。1階左右には作業室、展示室がある。それぞれの部屋は広場とは一体で利用できるように開放が可能となっている。2階は会議室、情報コーナーがあり、それぞれ付帯したテラスからは広場と富士を眺めることができる。室内には外の緑の映り込みによる空間の広がりも意識し、鏡を多用し成功している。広場に設置された地元作家の彫刻とのコラボレーションも、建築との一体感がある。また、この建物は省エネ環境にも配慮し、いくつかの試みがされている。ひとつはパッシブ空調システムで2階の南面をダブルスキンの蓄熱テラスとし、透過した暖気を冬至の太陽高度に合わせたタイルの蓄熱壁に蓄え、各室に送風できる工夫がされている。夏には北側の冷気を地中を経由して取り入れ、各室に供給している。その他雨水の貯留、回収など機械に頼らない省エネの工夫が、建築あるいはランドスケープと一体になって実現されている。 審査に訪れた翌日には、ガーデンウエディングの予定もあるとかで、今後有効的な利用の可能性が十分に感じられた。全体として富士山をテーマにした好立地を生かし、環境、建築、地域文化、運営への配慮が一体になって計画された好建築で、これからの建築の在り方として見るべき点は多い。 |
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(清 峰芳)) | |||||||||||||||||||||
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