所在地 : 愛知県愛知郡 |
地下鉄鶴舞線に続く名鉄三河線「日進駅」から南方向、国道153号に向かう県道から1本西に入った旧道沿いの新興住宅地の一角に、ロッツ・フィクションが建っている。新興住宅地とは言え、幹線道路に近い敷地周辺には、医療施設、金融機関、店舗などが集まり、比較的人通りの見られるコミュニティ軸となる立地でもある。 ここに土地を求めた施主と設計者とが、コンセプトの明確なユニークな住宅建築を創り出した。 外観の初見は、軽快なRCのワンボックス型住宅建築と見間違いそうだが、その軽快さは構造用合板を用いた木造に起因していることに頷いた。 敷地は、2階建の住宅と3台の駐車場とに2分され、建物周囲の犬走り的な緑地の他は、殆ど庭のない限定スペースの利用でもある。 この建物のユニークさ、同時に空間づくりの軸となる発想は、通常プライベートな空間である住宅を、子育てファミリーが食事をしながら遊ぶパブリックなコミュニティ空間として仕立てたことである。いわば兼用建築と言っても良い新しい住まいづくりの発想として、共感を覚えた。 内部空間の組立は、ワンボックスの白い空間の中に、風と人の道となるブルーの壁のスペースを、直線ではあるがチューブのように組み込み、そこから様々なフィクションを生み出すことを想定した汎用性の高い白い壁のスペースが、子供の成長行動を意識した段差を伴ってランダムに配置される。これがこの作品のタイトルの由来でもある。 ローコストとストーリーづくりに徹した建物は極力、仕上げを限定し、構造用合板を直に使用したディテールの少ない工務店泣かせの建築である。 これだけシンプルにまとめ切るには、施主の意図を組み込むコミュニケーション、空間として形にした設計者の力量と時間エネルギー、工務店の理解と努力が無ければなしえないだろう。新しい潮流の一つを予感させる住宅建築だと思った。 |
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(尾関 利勝) |
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