所在地 :福井県南条郡南越前町今庄28-10-1,2 |
今庄は福井県南部に位置する北陸屈指の豪雪地帯で、藩政期より宿場町として栄え現在も古い町並みが残る。学校は川のほとりで周囲を山で囲まれた自然豊かな環境に立地し、先に建つ中学校や同時に建設したこども園とともに町の新たな文教地区となっている。 校舎は騒音や町民の利用に配慮して国道やJR線側にグランドと屋内運動場を配し、落着いた川沿いに雁行形に教室棟が配される。一階は職員室や特別教室、環境のよい二階を教室とし、低、中、高と2学年毎のユニット構成とした明確なゾーン区分で、それぞれ上下左右隣接する部屋との関係を考慮した平面計画になる。一階と川との間には内と外の一 体的な学習を考慮した花壇や菜園やビオトープが造られて自然を身近に体験でき、また、冬期の雪を考慮して正面玄関や各建物には下屋庇型の雁木廊下が付けられている。 建物の構造は雪や耐震・耐久性を考慮して一階がRC造で、二階は子供たちに木のぬくもりを感じてもらえる木造とし、外観は地元の町並みの意匠をモチーフに壁の下見板、深い軒の出、袖壁、越前瓦屋根などが取り入れられ、今庄らしさや周辺との調和が図られた地域の文化の香りする姿を形作っている。 正面玄関を入って驚かされるのが、ホールに林立する丸太柱だ。直径が50pで高さは12mもある地元産の杉、根株付きのため独特な味わいと地に根ざした安定感がある。室内は全棟床暖房で大きく取られた窓だけでなく越屋根や妻壁の窓からも光が差し込み心地よい風が通り、効率の良い快適な環境をつくり上げている。また、各所に施された子供たちの描いたサインは壁面やガラス面に色を用いて大胆にレイアウトされ、単調になりがちな室内空間を明るく活気づけている。 地元住民や職人さん達とのワークショップや協働作業、地域の気候風土を生かし取り入れた計画、材料、構造、意匠など、関係者が一丸となって進め、「今庄らしい後世に伝えられる学校とは」を考えて形作られた、三者の情熱がひしひしと感じられる建築である。 |
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(上野 幸夫) | |||||||||||||||||||||
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