所在地 :富山県黒部市石田6771 |
海岸に近い畑の残る住宅地に建つ公立の知的障害児居住施設であり、「基本生活習慣確立」「自己実現支援」「地域生活移行支援」といった学園の方針の下で、様々な障害程度の子供たち55名がそれぞれの力を発揮しながら豊かに暮らすことを目指している。 既存施設での生活と隣接養護学校への通学を継続しながら建替えるという制約の大きい条件下で、施設配置と工程計画が緻密に検討され、地下水豊富な地域のシンボルである「水」をテーマとする大きな中庭を中心に、南側に居住ゾーン(第1期工事)、北側に管理・地域支援ゾーン(第2期工事)を配置することによって、居住ゾーンの快適性を確保しながら地域や養護学校との連携を創り出すことに成功している。 居住ゾーンは、障害程度と発達段階によって「自活訓練」「年長年少」「行動障害」「強度行動障害」に区分され、それぞれが「ユニットケア」の考え方を導入することによって細かくは9ユニットによって構成されている。その内部は、居室(個室を基本に部分的に二人部屋を意図的に設置)のほか、ユニットごとに異なる[プライベート→セミプライベート→セミパブリック→パブリック]の段階構成によってそれぞれの「家らしさ」が工夫され、それらの要となる位置2箇所にミーティングルーム(職員室)が配置されるなど、ソフトとハードの連携による密度高い平面計画が高く評価される。 空間的には、大小様々な中庭・外庭によって身近に自然を感じられる「遊び」と「回遊性」のある生活環境が形成され、その中に子供たちの自己表現と安心・安全への配慮が丁寧に加えられ、なおかつ、全体としては「積み木」のような楽しい空間と景観が創り出されている。この新たな環境での生活が根づき、子供たちの自己表現と生活臭が溢れて「家」らしくなる日が近いことを大いに期待している。 |
|||||||||||||||||||||
(桜井康宏) | |||||||||||||||||||||
|
|