審査総評


 

中部建築賞は今年で40回を迎える。中部地方の建築賞として最も権威ある賞として多くの建築家に認識されている。今年の応募数は一般建築部門が51点で住宅部門は37点であった。

 例年と比較して応募点数において変わったとは言えないが、一般建築及び住宅部門とも作品レベルはきわめて高いと感じた。第1次審査によって現地審査に選ばれたものは18点であり、各候補作品に対し2人の審査員により現地審査が行なわれた。第2次審査では各現地審査の報告が20分〜30分かけて行われ、議論の上、入賞、入選、特別賞が決定された。例年に比べ入賞作品の数が一般、住宅とも多いが、それだけ高いレベルの作品が多かったと言える。


全体としては地球環境時代、都市再生時代を反映した作品が多く応募され、又評価を受けているといえる。「熊野古道センター」は環境時代における新しい木造様式を作り上げるという、きわめて新しい意匠性への挑戦のエネルギーにおどろかされた。2度目の応募で今回現地審査対象となり、入賞を果たした「小谷村立小谷小学校」は過疎地の小学校としての役割と新しいコミュニティスクールの型が提案された。富山の開かれた地域の産業博物館的な役割を果たした「北日本新聞 創造の森 越中座」は地域活性化に連動した地域の民間企業の優れた環境デザインの成果として評価された。名古屋駅前に新しい都市景観をつくった「モード学園スパイラルタワーズ」やアーティストであるクライアントと設計者の共同作品としての「佐川美術館 樂吉左衞門館」、伊勢の伝統的な街並と高い匠の技術が継承された「五十鈴茶屋」、美しく繊細な構造を特長とした「いしかわ総合スポーツセンター」等一般部門でも高いレベルを持った建築が入賞作品となった。


第1次では写真とプレゼンテーションのみで現地審査対象作品が選ばれる。したがって今回入賞した小谷小学校のように過去に落ちながら入賞する作品も出てくる。要は紙によるプレゼンテーションもきわめて大事である。しかし現地に立ち、空間を体感することによる評価は大きい。外観だけでなく歩きまわることによってその楽しさを理解することによって評価が紙による評価をくつがえすことは往々にしてある。


住宅部門においては「3POKO」では家族の空間的一体感を作り上げており、とても好ましい印象を受けた。住宅における子どもとの関係を評価の対象としてより取り上げるべきではないかと感じた。その他街路に対しての公共性をもった住宅や、すき間をテーマとした美しい木造住宅等、ユニークで提案性を強く打ち出した作品が入賞した。


特別賞は「岐阜シティ・タワー43」である。高層居住そのものは住まいの形式としてあまり賛成できる形式ではないと私は考えているが、20数年かけ、再開発をなしとげた地域行政の努力を応援する意味で特別賞が与えられたと思われる。岐阜駅前の地域的な再開発は少しずつ着実に始まっている。今後新たな都市居住の形式が生まれることを祈りたい。入賞、入選、特別賞等の選にもれた作品にはその御努力に報いることができなかったが、今後とも中部建築賞を目指して、なお一層の御努を期待したい。

(仙田 満)

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