所在地 : 富山県富山市婦中町島本郷10-7 |
「環境と情報技術の共生を目指す緑の中のIT パーク」をコンセプトとする新聞社の制作拠点(印刷工場)であるが、「創造の森越中座」という施設名称に、「富山県(越中)という地域に誇りを持ち、工場をにぎわいやふれあいの場にしたい
」「新聞は創造力を生み出す文化であり、その製作拠点を文化を育む森にしたい」という施主の願いが込められている。 印刷工程と機器の特性を熟知した設計者は、3層からなる工場空間の中に立体的な流れとして生産システムを収めた上で、その全てを目の当たりに見学できる「ゲストエリア」をガラス越しに隣接させ、ダイナミックな立体的見学動線を創り出すと同時に、その対極にビオトープ化された雨水調整池や緑化された屋上庭園の背景である立山連峰へと視界を連続化させることによって、施主の願いとコンセプトを巧みに空間化している。 施工者も、「災害に対する万全の対応を含めて通年で安定した生産環境」を実現するための構造・設備計画を具現化すると同時に、仮設・リサイクルにおける環境配慮提案や仕上げ材選定におけるデザイン的視点からの各種提案(再生木・耐候性鋼板・天然石の使用等)によって施主の願いに応えている。 本施設は2006年7月に開館して8月から一般見学を開始しているが、2年足らずの間に入館者は10万人を超えたとのことである。また、本施設が立地する富山市婦中町地域では、周辺企業も観光客の受け入れ態勢を整備して「産業観光」の集積地が形成されつつある。このような意味も含めて、施主・設計者・施工者が理念を共有して創りあげた「地域文化の拠点」と評価される秀逸の建築作品である。 |
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( 桜井 康宏) | |||||||||||||||||||||
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