所在地 : 静岡県浜松市 |
浜名湖に面する高台に位置する絶景の敷地。東京と関西を仕事で行き来するクライアントはその中間的なこの地でのくつろぎを求め、納屋のような家を要求された。納屋が意味するものに答えるべく、簡素だが豊かさを感じられる空間を、シンプルな形態と、温暖なこの地の環境が十分生かせる工夫で試みた。隙屋と名づけられた特徴のある外壁は、黒く塗装した18ミリ厚の杉板を18ミリ間隔の目透かしで構造材に直接に貼った上に波型ポリカーボネイトをビス止めしただけであった。そんな簡単な仕掛けだとは思いもよらなかったが、光の屈折で銀色に輝き、高級感さえただよっている。納屋のイメージを強調するために隙間にこだわったようである。プランは4間×10間の単純な矩形に切妻屋根。いくら温暖な地域とはいえ断熱材なしではつらいので、建物内部の外周部にまわした通路の空間がダブルスキンとして断熱代わりになっている。昨シーズンの冬場は特に問題が無かったとのこと。また、地下は書庫とベットルームの穴蔵のような空間で、解放的な1階とは違い、包まれた空間で落ち着く。その地下からトンネルを抜けて海に開いたステージと称する不思議な空間あり、絵になっている。この地下部分と海に面した庭にあるテーブルの脚部は繋がっており傾斜部分の土留めとなっている。アノニマス的な表現を駆使しているが、実はなかなか芸が細かく計算され尽くした結果である。それを感じないように表現したのは「若い者にはできないよ」とでも言いたいニヒルな大人の贅沢か? 夕方、直接日没は見えないが海に反射する光と空の変化を眺めていると、時のたつのを忘れ、日常の憂さを忘れる。ここは至福の時をすごす空間となっている。 |
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( 谷村 留都 ) | ||||||||||||||||||
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