所在地 : 富山県黒部市吉田200 |
富山県東部地域の中心的都市・黒部市は、世界に通ずる日本企業のひとつであるYKKグループが創業した地である。同市のJR生地駅前に位置する黒部工場の一角に、23年前(1984年)、創業50周年を記念して建築されたYKK50ビルのリノベーションが、受賞の対象となった。 この建物はオフィス、展示場、国際会議場などからなる複合的機能を有する地上3階、地階1階建てで、過去数度にわたってリノベーションが実施されてきた。そのうち今回の計画が最大規模で実施されたものであるという。特に2層のオフィス空間と展示場、アトリウムなどの内部空間がリノベーションの中心的対象であったため、外観的な改変はほとんどない。したがって、旧状を知らないと一見したところで、何処がどう変わったのか、わからない。かつて2階オフィスは、天井の高いワンルームの大部屋空間として、パーティションと放射状にレイアウトした家具などによって区切られていた。しかし、中央部分の執務空間は、自然光が届かなく、照明位置も高かったため暗い雰囲気で、決して好ましい空間ではなかったようだ。そこで、今回課せられた課題はこうした問題点を解消することにあった。なかでも執務内容によるゾーニング分けと方向性のあるデスクレイアウト(平行配置)、ライン照明、色彩及びサイン計画など緻密に計算づくされた計画によって、内部空間の形態を大きく変えることなく、快適で、優れたオフィス景観を創出させているところが賞賛に値する。換言すれば、オフィス空間を物理的に変えることが第一目的ではなく、オフィスで働く人々の心情・心理を変えること、労働環境をゆとりあるものにしたところに、今回のリノベーションした意義があり、随所に何気なく創意工夫を凝らした秀作である。 |
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( 中森 勉 ) | |||||||||||||||||||||
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