立方体の白い箱が緑の中に見え隠れしている。別荘地のように見えるが実はJR亀山駅から車で5,6分の里山的な景色と混在している丘陵地に位置している。家を建てるかなり前から植栽を施した敷地が用意されていたために錯覚を起こしたようだ。模型そのままのような外観、住宅の特性を消し、要素を削ぎ落としたストイックで無機的な形態が住宅として機能しているか、に興味があった。デザイナー夫婦である施主は仕事と生活の場のボーダーがない新しいライフスタイルを実現するため、イメージする生活をそのまま建築に置き換えている。具体的には1つの箱が仕事の場、別の箱が夫婦で過ごす生活の場である。現在はこの2棟であるが、3番目の箱として子供ができたら親子で過ごす家として9mの正方形が3mの間隔をあけて3棟並列で提案されていた。
住宅の特性を消す手法として、南に開けた眺望がいい場所にもかかわらず、壁を残し、一度閉じてから内側に屋根のないテラスを作るという方法で窓を作っている。通風のための小窓的要素も壁には作らず天窓などを利用し、開口部を限定している。1つの箱に1つの機能という分棟案は今でも東南アジア等でよく見られる原始的な計画の手法であるが、徹底して白にこだわったインテリアと限定された景色の取り込みで透明感のある都会的な住宅になっている。都市部で周りを拒絶しなければならないほどの状況ではない場所であえて行う理由が分かりにくいという印象であったが、新しい住まい方を示したともいえる。
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