50代の夫婦が、老後の人生を2人で快適に過ごしたいとの強い願いを実現するため、自分たちが気に入った若き設計者夫婦を探し当て、完成した住宅である。奥様がインターネットで検索を重ね、事務所の
設計に対する姿勢や建築作品を閲覧して、最もふさわしい人を選んだとの事で、IT時代の良いところが発揮されたと思われる。
さて場所は豊田市の郊外、周辺にも緑が多く残っているところで、永年生活されていた住まいの建て替えであり、隣の住宅には親御さんが住まわれている。
建物は端正な印象のある切妻屋根で覆われている。
戸を引き込むと南の庭に向かって、居間と和室が、広縁、濡れ縁を介して開放され、前の道からも中の様子が垣間見えることになる。昔の民家で体験したような、どこか懐かしいたたずまいである。高気密、高断熱、24時間換気、屋根裏換気、床暖房設備など、スペックは現代住宅であるが、気候の良い日に建具を開け放てば、自然の息吹が感じられるような環境である。
また縦型のルーバーで囲われた玄関ポーチも、さりげなく隠し、さりげなく見せるという点で成功している。居間台所と、和室の天井は、屋根勾配に沿って傾斜しており、頂部のトップライトから穏やかに調整された光が空間を満たしていた。
一方広いとはいえない寝室は天井が低く抑えられ、落ち着きと安らぎが与えられている。
仕上げ材料は木と漆喰と紙にほぼ限定されており、余分なディテールはそぎ落とされている点も、好ましさが光る建築作品となっている。
|