所在地 : 愛知県額田郡幸田町 |
額田の家は国道から少し谷間に入った位置に建ち、敷地南を川が流れている。周辺は新しい住宅地となっているものの、まだ閑静な田園風景の中にある。 木造2階建のこの住宅は、2階建の北棟と平屋建の南棟、及びその間を東西の壁面で囲んだ中庭の3つの空間から成る。これらの空間は、10枚の垂直の壁面と水平の屋根とで構成される。壁には釣り合いよく大小の開口部が穿たれ、これらの壁から分離して空中におおらかな屋根が浮遊している。これらの構成は繊細なディテールと施工によって実現されている。 外観は黒い鋼板張の外壁が優位で一見閉鎖的に見えるが、中庭廻りは壁面や建具等も木の素材を優先した仕上げとなり、また、大きな開口部を通して豊かな自然環境を取り入れた構成によって、開放的で暖かみのある印象を受ける。 南棟と北棟の連絡は中庭を通らなければならないが、雨の対策には垂木構造とした南棟の深い軒、北棟2階南面のテラス、北東部のテラスが庇となって対応している。また、1階床高は外部床面との差を極めて小さくするように作られているため、中庭を含めた全体が一体化した印象を受ける。なお、框や柱等、外部に露出する部分や床面に近い部分に使用されている耐久性の高い外材は、設計者の経験と実績により選択されている。 このように、空間構成、ディテール、素材の選択などにより質の高い住宅建築であると評価できる。また、これらの空間構成によって営まれる生活スタイルは、自然環境との共存という観点においても見事な解を提示していると言えよう。 |
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( 高 嶋 猛 ) | ||||||||||||||||||
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