所在地 : 石川県羽咋郡宝達志水町 |
金沢から車で1時間ほど北上したのどかな田園地帯の集落の中に建てられたこの2世帯住宅は、木の外壁の外部をガラスで覆ったという不思議な建物。非常に興味をそそられ現地に立つと図面で見た以上に端正なプロポーションで、単純なガラスの箱の中に木の箱が入っている、冷たすぎない現代住宅が敷地と周囲の山並み、田畑との境界があいまいな緑の多い環境に違和感なく存在しているのが意外だった。 平面構成は長方形の2階建て部分と平屋の移動空間が中心から外れた位置でクロスするという単純なものだが、1階の東側はLDK,水周り、夫婦寝室というベーシックゾーン、移動空間を介して西側は両親寝室と和室、2階は吹き抜けでLDKと繋がる勉強コーナー、子供室、納戸と明確に機能が分離されている。 この住宅の特徴になっている外壁は、風化していく木の質感の好き、嫌いは別として、出来るだけきれいなまま維持し、1.8×2.25のグリッドで構成された、構造体の潔さを隠したくないという理由で外観がすべてガラスで覆われている。その産物としてのガラスと木材との間の空気を断熱層にするという大胆な試みはどの程度成功しているか判断できないが、あえて結露を起こさせ水を排出するという仕組みになっている。太陽の動きにあわせて結露部分が東から西へと移動する変化の様子が観察できるそうだ。夏季は屋根面に雨水を循環させて散水し、気化熱により室内空気をコントロールしている。 胴縁等の補助材を使用していないため配管の苦労の跡がみえる裏表のない構造、既製の機械に頼らない空気や水による環境づくり、単純で大胆な空間構成などが理科系の住宅という印象の反面、手作りの引き戸の鍵や台所のフードなど生活の細やかな配慮も数多く、チャレンジ精神と今後の改良による新しい試みの住宅が期待できる予感がした。 |
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( 谷 村 留 都 ) | ||||||||||||||||||
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