所在地 : 愛知県海部郡弥富町大字楠3−33・34 |
中国木材(株)名古屋事業所は、三重県に近い伊勢湾北端の一角に広大な敷地を持つ。敷地の西側を道路が通り、正門脇に事務所の建物が位置する。 この建物は公開設計競技によって設計者が選定され、この設計競技から1年という短期間で竣工している。設計者は、設計条件であった中国木材(株)の主力製品である住宅用米松乾燥材・集成材利用の解答として、『木に対する「やさしい」、「伝統的で地域に根ざした」といったこれまでのイメージをできる限り取り外す』考え方によって、木を素材とした新しい空間構成を表出し、今までにない空間体験を可能としている。 その中心は、スパン14.5m×33mの事務空間である。150o×120oの小断面の集成材を板状に連結しプレストレスをかけて両端で支持し(吊り)、下に凹の緩やかな曲面の屋根を形作っている。この屋根の下面をそのまま天井として現し、天井面には照明・空調設備等の器具を一切排除した無柱の空間を、様々な環境工学的シミュレーションにより実現している。また、24時間活動を続ける事務所にとって、この独特の事務空間によってもたらされる光の形態は、夜間の確かな目印となっている。 事務室の他の部分は、木を骨組む・積み重ねるという方法で、中国木材(株)の製品のショールームとしての機能を充足している。 この建築を実現させた構造設計者と施工者の技術力も高く評価され、木という素材が従来持っていたイメージを大きくくつがえし、新たな可能性を提示した優れた作品として評価できる。 |
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( 高 嶋 猛 ) | |||||||||||||||||||||
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