所在地 : 愛知県名古屋市西区則武新町四丁目1−35 |
産業技術記念館は10年前、廃工場を紡績産業と自動車産業の歴史を中心とした産業博物館に再生させたもので、動態展示や大正期のレンガ壁のある建物の再生が話題になり、すでに大きな評価を得ている。「産業考古学、建築史の両面から評価の高い構築物を産業遺産として保存しながら社会へ貢献する」という設立当時のコンセプトを継承しながら、今回は更に時代が求めるニーズを付加している点が評価される。 10年前の再生時に残され、駐車場の一部になっていた、「のこぎり状のレンガ壁」を外壁に利用して増築し、のこぎり状の屋根と共に旧工場のイメージを保存し、その大空間の中に自動車産業の黎明期の「材料研究所」「試作工場」という2棟の木造工場の一部を移築している。また、レンガ壁からRC造に移行する過渡期の工場として外壁RC造、木造トラスの「鉄工場」の一部も移築している。この3棟の工場移築が紡績産業から自動車産業への移行期にあたる状況を明確にするということで現行の展示の間に挿入し動線の再構築を行っている。移築された工場への導入も無理がなく自然に内部に入り、その後外観を見て階段を上がり屋根を見ながら自動車の歴史へ移動するというように、展示のシークエンスが成功している。更に付加価値として、レストラン、カフェの改修、ショップの増床、資料館としての図書室の移設や江戸時代以降の科学技術資料の展示保存などがある。 新しく作られた部分は歴史の前でとかく薄っぺらに見えがちだが、丁寧に良く考えられた納まりや適切でバランスのいい素材選択が加わることでそれぞれのよさを発揮していて見事である。最近多用され過ぎている感のあるガラスだが、この建物においてはその透過性が新旧の対比と融合の役割を果たす使われ方である。増築により広くなった施設を効率よく利用できるように作られたガレリアは、展示以外の施設の利用も可能にしており施設の利用方法の巾が広がるという点が魅力的でリピーターも増えそうだ。 |
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( 谷 村 留 都 ) | |||||||||||||||||||||
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