所在地 : 愛知県名古屋市中区栄三丁目6−1 |
名古屋市の中心部にある栄は、オフィス施設と商業施設が共存している街区である。道路中央に緑地帯をもつ通称100M道路と呼ばれる久屋大通りとこれに平行にはしる大津通りの間に再開発計画によってこのビルは生まれた。 街なかの再開発ビルは権利調整、関係者の総論賛成各論反対、テナント入居の苦労、レンタブル比等々種々の主張や権利を調整していく作業に大半の時間と労力を費やしてしまう。このビルも計画が始まってから10年余を経過したそうであるが、それらを感じさせない端正な外観と空間で街区に参加している。久屋大通りに面するファサードは瀟洒なサッシ割と白いガラスと透明ガラスによって構成され最上階を大曲面とパラペットデザインにより周辺の目一杯のビル群とひと味違う顔をつくりだしている。 建物の中に街をつくるというコンセプト通り、建物中央に通り抜けの大通りをつくり、ウインドショッピングや立ち話の出来る贅沢なパブリックスペースが、2つの道路をつないでいる。その上部は多層の吹き抜け空間でこれを囲んで店舗が並び、客が回遊しショッピングを楽しむおしゃれな商業空間を構成している。吹抜空間を介して各階の街のいろいろな表情が垣間見えてくるのも楽しい。 共用面積比率が大きくなるとそれだけレンタブル比が低くなるが、それを乗り越えてここまで持ち上げてきたディベロッパー、設計者の170店舗をまとめていく意志と決意が感じられ、あろまほしき商業空間の姿を提示できたと推察する。 9〜12階のオフィスは4層吹き抜けのアトリウムで自然光をハイサイドから取り入れているが設計者の意図したように憩いの場、コミュニケーションの場になっているのだろうか。 建物の技術的解決は設計施工共さすがにきちっとしていて心地よく、大規模建築をまとめ上げる確かな力量に感服する。 |
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( 近 藤 一 郎 ) | |||||||||||||||||||||
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