所在地 : 福井県越前市上大坪町35−1−1 |
武生市街地近郊の山間に入った長閑な田園風景が広がる一隅に、銀色の瓦葺きで統一された施設群が周囲の景観にマッチして建っている。武生市を含めた南越地方から通学する養護児童のための学校である。この学校は障害の重度化、重複化に対応して、幼稚部から高等部までの一貫教育行うための養護学校であると同時に、地域の小中学校と連携して特別支援教育を実施できるセンター的な機能も担っている。 建物の全体配置は、一般の学校建築と同様、普通教室棟・特別教室棟・管理棟・体育館棟に分棟形式で配置されている。なかでも特徴的なのは幼小学部、中学部、高学部とそれぞれの学部ではっきり分割したクラスター型の配置である。この形式だと教職員の各学部への移動のための動線が長くなりがちであるが、一般の児童とは異なり校内での行動半径は小さく、教職員も各クラスで児童とともに過ごすことが多いため、むしろこの配置形式がベストと考えて結果であるという。こうした考えは、本計画が持ち上がった段階から養護児童の学校内における生活行動を入念な観察と分析を行い、かつ教職員とのディスカッションを重ねて、様々な観点から導き出したものであるという。その意味で新しい養護学校のモデル形式となることが期待される。 この学校のインテリア部分での注目すべきところは、県産材である杉材を普通教室群の架構や各教室や廊下の化粧材として大量に使用されている点である。もちろん、県産材を奨励しているところは他県でもあるが、この学校での使用例は、構造材として集成材を使うのではなく、一本の杉材をそのまま使用し、至る所で露出させ、懐かしい木造校舎というイメージを喚起させるのに成功しているところである。 |
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( 中 森 勉 ) | |||||||||||||||||||||
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