所在地 : 福井県福井市四ツ井二丁目8−1
 総合病院の役割は、各医療科部門の専門性の提供と地域医療の拠点的役割を担うのは必然的である。最近はこれに加え、大規模な災害等に対応した免震構造の施設整備が必須となりつつある。
 JR福井駅東口からそれほど離れていない住宅密集地のなかに、新しく建設された高層建築の県立病院もこうした役割を有する施設となっている。
 この新生県立病院の建設事業は、もともと老朽化していていた既存の病院施設群を現在地で建て替えたことから始まったものである。第1期建設工事の成果として高層の病院本棟であって、現在第2期工事が隣接地で進行しており、最終的には平成20年度まで続く事業である。
 したがって、当該病院本棟は既存の病院機能を維持しながら、かつ限られた敷地面積で建設しなければならないという極めて困難な条件下で、建築計画が行われたのである。特に限られた敷地から病院本棟を高層化するという解を求めている。この高層化によって、低層総合病院でありがちな動線の伸長化が解消され、各診療科部門を低層階(4階)までに積層することで明快な診療科構成と動線が確保されている。そして、中層階(6階)から最上階(12階)まで入院病床階とし、わかりやすい空間構成である。
 このわかりやすい空間構成は、高層階の病棟の平面計画にも端的にあらわれている。それは看護効率の良い三角形病棟を構成し、ナースステーションを病棟中央部に配置して全体を見渡せるようにし、看護動線の短縮を図っている点である。しかし、もっとも高く評価すべき点は、療養空間としての病室と病棟食堂などのアメニティ空間の追求であろう。すなわち、ここでは4床室の各ベッドはすべて窓辺に面し、採光と通風、眺望を確保し、個室的環境の充実を図っている点である。さらには、白山連峰の眺望を楽しみながらニュークックチル方式による適時適温の給食をとることのできる病棟食堂もアメニティ空間のひとつとなっている点も見逃すことはできない。
 こうした患者本意の病院づくりに徹しているところは、これまでの負のイメージばかり目立っていた病院建築を払拭させたと言え、今後の病院建築の在り方に一石を投じた好例となろう。
( 中 森 勉 )
主要用途 病院
構  造
鉄骨鉄筋コンクリート造
(免震構造)
階  数 地下 2階 地上 13階 塔屋 1階
敷地面積
64,373.08u
建築面積
8,642.41u
延床面積
64,725.40u
建築主 福井県
設計者 株式会社 久米設計
施工者 大成・竹中・前川元・西田・松尾・深谷共同企業体

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