所在地 岐阜県高山市岡本町1丁目18 |
老朽化した小学校の再建にあたり、「地域に開かれ、自然の恵みを取り入れ、環境にやさしく、木の文化を次世代に伝えたい」という、市からの盛りだくさんの要望に応えた作品。塀と呼べるものはなく、周辺の歩道が敷地内に入り込んでおり、校舎も高山の伝統を意識し、また周辺の街並みのなかで質の向上に貢献していると言えるデザインである。開かれたデザインは関係者一同熟慮の上の判断とのことで、それだけでも高山には地域の健全な人間関係が維持されていることが分かる。 運動場に面した南の平屋は低学年棟であり、低い軒先が長く水平に延び、大規模施設にありがちな圧迫感が軽減されている。オープンデッキと芝生に覆われた中庭を介して、1階RC造の特別教室群の2階に木造の高学年棟が置かれており、なだらかなスロープを使って、児童がスムーズに中庭に出て行けるよう工夫されている。 室内は木を基調にデザインされ、小屋組も表しで、高さ方向に空間が展開している。教室とワークスペースとの境の上部には、簡易な間仕切りが設けられ、さらにワークスペース上部の高窓を介して、光と風と空間が流れており、実際に真夏でもかなりの涼感が得られている。また暖房は油焚きの温水ヒーターと床暖房が併用されているが断熱性能に優れているため、ランニングコストが計画より大幅に削減されているという。東に配置された職員室等の上階にはプールが設けられているが、木樹脂製の縦格子を用いて巧妙に周辺から遮断している。 この小学校が先行モデルとなり高山市の小学校の環境水準が、飛躍的に向上して行くに違いない。 (谷口元)
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