トヨタ車体株式会社開発センター技術本館
所在地 愛知県刈谷市一里山町金山100
 刈谷市の自動車産業の一角に42万2千uの工場敷地、その丘陵の工場群の南側にこの開発センターは位置し、外側に向けた玄関として工場群の新しい顔となりつつある。このセンターの南前面にはまだのどかな溜め池や田園風景が残っている。
 センターでは開発の中枢である設計、デザイン、製品企画という機密性を求められる業務が行なわれ、それぞれ独立した業務と連続した共同作業を行いながら、一体的に物づくりをしながら一つ連続した執務空間を構成している。その執務空間の中心には東西またがる2層から5層まで大きな吹き抜ける空間とトップライトがあり、業務の重苦しさをやわらげる象徴的空間として存在している。この空間は各セクションとのコミュニケーションの場となり、各階の吹き抜けを跨ぐデッキではコーポレイションの場として活用され連帯感が感じられる。この空間の東デッキでは下階で試作された車体が各階にエレベータで運ばれ、それぞれの階で視覚による検証できるようになっている。最上階ではデジタルスタジオ、屋外での人の視覚による検証と、技術、デザイン、制作が交互に一体となって物造りが行われる構成となっている。このエレベータの形態は象徴性を持たせた円形の構成とし建物に東外部に表示されている。
 主空間としての執務空間は一体感を高めるため、視覚を遮らないよう構造の工夫、空調設備を考慮し床面吹き出しシステムの採用、エヤーガーデン、電動ブラインド、ダブルスキンの採用や熱回収、コージェネレーションシステム等様々な方法で省エネルギーな快適な執務空間としている。ここでも中央の吹き抜け空間はもう一つの特色である南のダブルスキンと共に大きな役割を演じている。トップライトとダブルボイド、ダブルスキンは執務空間に柔らかい光と、熱交換を利用してのランニングコストの軽減をはかっている。
 またダブルスキンは、柔らかくまだ田園風景の残る景色を眺めさせ、外部にはその風景を柔らかく写し出し、時と季節を新しい景色として作り出している。今後工場の周囲には緑化計画が為される計画があり、工場内と周囲の環境に大きな影響を与えられることに期待できる。そして人間、高度な技術、社会との関係に新しい創造と、物作りに美しい環境が作られることが望まれます。
( 上 村 貞一郎 )
主要用途 開発センター
構  造 鉄骨造
階  数 地下2階、地上6階、塔屋2階
敷地面積
422,054.32u
建築面積
5,231.92u
延床面積
24,007.92u
建築主 トヨタ車体株式会社
設計者 清水建設株式会社 名古屋支店
施工者 清水建設株式会社 名古屋支店

一つ前へ戻る