名古屋大学オークマ工作機械工学館

愛知県名古屋市千種区不老町
 名古屋大学を南北に走る幹線道路と通称ノーベルロードと呼ばれる構内歩行者専用路が交差するところに立地する。卒業生でもあるオークマ社長の寄贈によりつくられた校舎である。設計者は敷地条件とモノづくりを探求する工学研究機関の要件を読み取り検討を重ねた。そのプロセスが完成した建物からも伝わってくる。
 コンクリートとガラスだけで作られた建築はキャンパスの一角で控えめではあるが凛とした表情をしている。現代建築の代表的な手法を用いた表現をなぜここで採用したのか実際の建物を見てそういう表現に収まったことに納得した。
 軽快でのびやかな庇によって水平線が強調され高低差を生かしあえて低層に抑えた効果もあり、通りにはギャラリーとか資料館といった雰囲気が漂っている。大味な建築が多い中でこの建物は建築らしい雰囲気を醸し出している。
 内外コンクリート打ち放し、全面ガラスという作り方は近年省エネルギー化の要請から難しくなっている。この建築はこの手法で作られた最後のモニュメントになるように思えた。
 豊田講堂以外はほぼ改修や建て替えなどで原型をとどめていないキャンパス、初めて足を踏み入れた当時とは様相が全く変わってしまった。時間とともに移り変わるのが日本の建築の宿命なのかもしれないが建築は歴史の証人でもあり文化の伝承者でもある。この小建築はそんな中でコンクリートとガラスの建築様式を次世代に伝えていく存在になるかもしれない。
 建築を取り巻く状況は先が読みにくい。そんな中でこの建築は原点に立ち戻ってその在り方を問おうとしているようにも感じた。
  内部の実験室には所狭しと測定機械や工作機器がずらりと並べられ活気に満ちた雰囲気が漂っている。日本の工業技術を支える研究と人材育成の現場を目の当たりにし、将来の日本の可能性を信じたくなった。この建築の中で学んだ学生たちが想像力豊かな活躍をしてくれることに期待してやまない。
 昨今建築技術を支える職人技や緻密な気配りで設計者の意図を実現してくれる建築技術者が少なくなっている。そんな中難しいコンクリート打ち放し建築を美しく作り上げた人達の熱意に敬意を表したい。優れた建築を目指して積み上げられた多くの関係者の熱い思いが伝わってきた作品である。
(藤𠮷 洋司)
 この建物は、名古屋大学内における工作機械メーカー寄付金による実験、研究、教育施設の計画である。先ずは、若手建築家の意欲的な設計を期待して基本設計を依頼した名古屋大学の取組、そしてそれに答えた建築家の努力を評価したい。
 敷地はキャンパス内の山手グリーロードとノーベル賞受賞者の記念建物を結ぶノーベルロードが交差する場所にある。中高層の建物が立ち並ぶキャンパスにあって、敷地の高低差を生かしてボリュームを抑えたこの建物は周囲からよく目立つ。ノーベルロードに面した南側は、軒を低く抑え、水平ラインを強調したファサードが美しい。また、大きな庇とガラス面により、通りから自然と建物に引き込む効果も生んでいる。コンクリート打放面は単調さを避けるためにグラデーションをつけるなどの工夫もみられる。
 屋上には多用途のルーフガーデンが設けられているが、軒を低くすることで通りと屋上が近くなり、外階段から直接ルーフガーデンにアクセスできる仕組みが楽しそうである。何かのイベントなどに使えそうな空間だが、今のところあまり利用は少ないとのこと・・
 台形の敷地と高低差を最も生かしているのが講堂である。残土処分が少なくて済んだ、という環境的、経済的なメリットもあったと聞くが、何よりも安定した音環境、ステージへの集中する配置を実現している。今後、この建物がキャンパスの全体の中心となり、また学生たちが集まる広場となることを願うものである。
(松本 正博)
主要用途 大学
構  造
鉄骨造+鉄筋コンクリート造
階  数 地上2階、地下1階
敷地面積
243,659.61㎡
建築面積
845.44㎡
延床面積
1,485.61㎡
建築主 国立大学法人東海国立大学機構
設計者 国立大学法人東海国立大学機構施設統括部、諸江一紀建築設計事務所、D.I.G Architects、佐々木勝敏建築設計事務所、名古屋大学 工学部施設整備推進室、株式会社東畑建築事務所名古屋オフィス
施工者 松井建設株式会社 名古屋支店、株式会社雄電社 名古屋支店、日比谷総合設備株式会社 東海支店
詳細は応募者のホームページを
ご覧ください。
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