中村区役所等複合庁舎

愛知県名古屋市中村区松原町1-23-1他
 廃校になった小学校跡地を利用して建てられた区役所、保健センター、市税事務所、などの総合庁舎である。この建物は設計施工コンペで実現したことに特徴がある。
 コンペの要綱には含まれなかった耐震化と屋上庭園というスペックが盛り込まれたことで市民の憩いの場となりさらに安心して万一の災害時などの避難場所として利用できる。
 その実現には通常のプロポーザルでは予算上のやりくりがむつかしい。設計施工ならではの成果と言える。出来上がった建物は当初の意図をきっちり反映し気持ちのいい空間に仕上がっている。
 特に当初想定されていた5階建て部分を二階に抑えその屋上を庭園として開放したおかげで密集地の中に別世界が生まれた。緑が少ない殺風景な環境の中でここに来るとほっとした気分になる。伸びた芝生には都会の中にも関わらずバッタがいたのが印象に残った。
 屋上庭園には多くの市民が日常的にやってきてくつろいでいるという話も聞いた。区役所は通常書類をもらいに行くぐらいしかないところだが残されたグラウンドなどを含め市民に親しまれる場所が生まれた。災害時の避難場所としてもすぐに思い浮かぶ場所にしたいという設計者の思いが実った建築である。
 市民が利用する場所は木のルーバーが用いられ和らいだ雰囲気になっているのも好感が持てる。設計者が縁側という言葉で表現したスペースはその意図がうまく表現されたものとなっている。建築的に難しいプログラムを調整しさらに耐震化のために注がれたエネルギーの大きさを十分感じた作品である。
 名古屋市の指針では80年の耐久性を持たせることになっているという、この建築はその何倍もの耐久性を有し市民の大事な場所として利用されるに違いない。
 公共建築は一度建てられたら建て替えは難しい。そのためには予算などの制約はあるが望ましい建築を目指すべきである。今回の建築はその作り方に一石を投じたものと言え高く評価される。
 築60年ほどの庁舎を、小学校跡地への移転新築として計画された建物である。建替えにあたっては、区役所としての機能のほか、保健所、土木事務所、市税事務所の機能を併せ持つ複合庁舎として区民サービスの向上、地域の安全・安心及び活性化を図っている。
 この建物は一言でいえば“庁舎らしくない庁舎”である。計画にあたっては、多目的広場、屋上庭園、講堂など庁舎に目的がある人だけでなく、区民が日常的に利用できる開放されたスペースの設置が提案された。それらのスペースは、実際に盆踊りやスポーツイベントなど、地域交流の場として活用され、区民の憩いの場となっている。特に屋上庭園は、パーゴラの設置や緑化計画により快適な空間となっている。想定外に職員たちの利用度も高い様である。また、来庁者エリアの外側には交流回廊“エンガワ”が設置され、機能的な動線としての役割だけでなく、多目的広場や屋上庭園との一体性を持たせて、“気楽に立ち寄れる庁舎”としての滞留空間となっている。正に“地域に根差す日常的な居場所”となっていると感じたところである。
 区民の安全確保という面からは、柱頭免振、基礎免振を複合的に採用して、掘削土を減らすという環境面への配慮も図りつつ、災害時の拠り所となりうる提案である。また、区民の避難拠点となりうるだけの電力供給、井水とマンホールトイレ等による自立した給排水機能、液状化対策、水害対策など限られた予算の中、多岐にわたる対応を図っていることは特筆に値するものである。
(藤𠮷 洋司) (松本 正博)
主要用途 区役所
構  造
鉄筋コンクリート造(免震)
階  数 地上5階、地下1階、塔屋1階
敷地面積
10,599.39㎡
建築面積
4,084.26㎡
延床面積
17,678.84㎡
建築主 名古屋市
設計者 竹中工務店
施工者 竹中工務店
詳細は応募者のホームページを
ご覧ください。

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