第51回 中部建築賞 入選・入賞 作品選評

審査総評
 中部建築賞の審査員長任期の最後の年になりました。個々の受賞作品の選評に関しては各審査員にお任せし、私は審査員長を務めた過去4年間の応募作品に関しての感想を述べたいと思います。  今から丁度100年前の1919年に、ワイマール共和国で開校した「バウハウス」は「芸術と技術の統合」、さらには「デザインの産業化」を旗印として現在のモダンデザインの源流となりました。そして「建築デザイン」はさまざまなデザイン分野を統合する役割を担い、「バウハウス」の理念と運動を牽引してきました。
 中部建築賞の50年の歴史を振り返ると、その初期には明らかにこの「バウハウス」の影響を強く受けていました。しかし、ここ数年の「建築デザイン」からはさまざまな新しい傾向を読み取ることができます。「バウハウス」が見落としてきた、あるいは重要視してこなかった「デザイン」を、この中部建築賞の審査を通して私は3点ほど思いつきました。
 一つ目は「リノベーションのデザイン」です。古き良きものを現代の技術、材料で修復、保全し、現代的機能にそったものに改修する。これには機能そのものも改変する「コンバージョン」も含まれます。
 二つ目は「自然のデザイン」です。「ランドスケープデザイン」と呼んでも良いかもしれませんが、もっと踏み込んで「建築と自然の融合のデザイン」と考えたいと思います。既存の自然を傷めることなく、積極的に自然を取り込み、自然との一体化をめざしたデザインです。
 三つ目は「まちづくりのデザイン」です。単体の建築だけでなく、「群」としての都市環境に配慮したもので、「町並みのデザイン」なども含まれます。沈滞した「まち」の活性化、失われた「コミュニティ」の復活などが目指されています。
 これら三つのデザインに共通するキーワードはなにかと考えたとき、「再生」という言葉が一番相応しいことに気がつきました。「建築の再生」「自然の再生」「まちの再生」です。「バウハウス」が掲げた「芸術と技術の統合」「デザインの産業化」は、我々の環境を快適で美しいものに進化させてきました。
 しかし、ここであげた「三つの再生のデザイン」は、短期的には「経済のロジックに乗らない」、つまりは「産業化しづらい」ために、後回しにされてきたものです。我々は「新しさ」や「効率」、「合理性」や「生産性」を求めるあまり、歴史・文化をないがしろにし、自然を破壊し、コミュニティを喪失してきたようにも思えます。
中部建築賞の審査で見えてきたのは、「バウハウスを超えたデザインの萌芽」でした。「人間にとって最も好ましい環境を再生させるためのデザイン」でもありました。  審査員長就任当初に述べた言葉を思い出しました。「中部地域の風土とは何かを問う」と表彰式で話した記憶があります。そして今、人間の歴史、文化、生活の基盤である「風土の再生」こそが、建築デザインが担うべき役割であることを、この中部建築賞審査から学ばせていただきました。
(栗生 明)

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