井口洋夫記念ホール

所在地 :愛知県長久手市横道41−1
 名古屋市東縁部に隣接・直結する長久手市のメインロードサイドの一皮奥、里山林環境に抱かれ集積された豊田系中枢研究施設群の新たな「叡知のコア」として当記念ホールは計画された。既設の豊田理化学研究所の西端から北方に下る深田池に向け「知のスパイン軸」が貫く配置コンセプトが痛快である。
 この軸上の2階アプローチレベルがガラス張り持出し・直線状の回廊展示空間、池畔レベルの後退した1階がホールと一体化も可能なホワイエ空間で、ともに東面する池の修景に全面開放されて高潔で心地よい交流空間を構成する。ホワイエ上の2階に「フェローギャラリー」、隣接して西の里山林に開く会議室を平行配置して、学術的な交信と発信の場に供されている。
 多大な学術功績と本研究所長経歴の井口博士の「記念ホール」創建については、古いご学友でもありモノづくりを先導される本研究所理事長の並々ならぬ肝入りが随所に感じ取れた。紛れもなく、粋を集めた素晴らしい建築所産である。
 ランドスケープ面では、同上軸線に絡む水上の「知足の蹲踞」を修景上の座標原点に据え博士の「故郷への軸」を傾けて交錯させて、例えば、西方に生誕地・広島の段々畑やモミジ、東方に研究拠点・東京のジンダイアケボノ並木を配したとされる。その蘊蓄に感じ入るには導入植生等はまだ控えめで、里山林に抱かれた豊かな池水環境を享受して構内研究者等が自在に散策・リフレッシュできるのは少し先かと感じた。
 現地審査時の実感として、入構ゲートや本建物での高度なセキュリティ管理と相まって、建築自体と周辺環境の素晴らしさにややもすると気位の高い孤高感が否めない口惜しさが残った。願わくは近い将来、旧来の里山林に付加された新植生や新添景の熟成とともに、地域との融和感がより深まらんことを…
(鈴木 利明)
主要用途 事務所
構  造
鉄骨造
階  数 地上2階
敷地面積
267,262.28u
建築面積
820.63u
延床面積
1,170.50u
建築主  公益財団法人
 豊田理化学研究所
設計者  株式会社 竹中工務店
 名古屋一級建築士事務所
施工者  株式会社 竹中工務店
 名古屋支店

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