多機能型生活保護施設愛恵園・愛恵園授産所所在地 :愛知県岡崎市舞木町字小伊沢9−2 |
「まちとともに生きる生活保護施設」という、建築計画としての社会的重要性と可能性に期待を抱きながら、いわゆる「迷惑施設」が本当にまちの居場所になっているのだろうかという懐疑心の半々で現地審査に向かうこととなった。しかし、すぐに諒解できたのは、この計画が設計者の意図を強行したようなガラス張りの建物ではなく、入居者達が安心して快適に生活ができる様に保護されること、社会と再び繋がるきっかけがもたらされる場であることを念頭においた設計されており、まちにひらいた状態を可能としているのは1951年以来この地域に根ざして様々な福祉支援活動を展開してきた事業者の経験と認識、積み重ねられた地域との信頼関係によるものであるということだった。 車通りの少ない市道は構内通路の様で、居住者が職員と立ち話する姿もみられた。駅から歩いてくると歩道が拡張して広場、エントランス、ギャラリーと連続するという具合で、広場と通りに面した厚生施設と授産施設の食事室にはフルオープン可能な建具が設えられている。また、各施設にはだれもが自由に出入りすることができるようになっているのだが、それぞれの管理室も道に面しているため、見通しが効き、セキュリティの連携がとりやすい構成になっていることがみてとれた。 厚生施設はグループホーム型でユニット単位のボリュームで敷地形状に沿う様に分節配置され、立面は県産材と白黒サイディングをレイアウトする等、周辺の住宅地スケールに合わせた配慮がなされている。一方の授産施設の作業所の環境は若干暗い印象をうけた。太陽光などの変化に対して敏感である人に合わせてあえて暗くしていると事業者から説明があったが、閉じることを必要とされる作業スペースの外壁にはディスプレイボックスが設置されて、情報のオープンスペースとしているのもアイディアである。 共生社会の実現のために、注目され、評価されるべき建築計画である。 |
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(加茂 紀和子) | ||||||||||||||||||||
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