所在地 :富山県黒部市三日市1301
 黒部市と宇奈月市合併10年を記念して統合した黒部市の新庁舎である。合併に伴い分散化した行政機能と保健センターを集約し、市民が集う交流スペースを付加すること、市民協働の場としての市役所のあり方が求められた。
 敷地は、JR黒部駅前商店街の通りから奥に入った小学校と幼稚園の跡地だが、静かな住宅地の中にある一方で、国道8号線から延長するロードサイド型大型商業施設が建ち並ぶ大通りにも面する、L型の難しい敷地である。
 設計プロポーザルで選ばれたこの案は、議会・行政機能を集約した行政棟と、市民交流スペース、保健センターを集約した交流棟の分棟形式としている。
 大きなボリュームの行政棟を敷地の中央に置き、その周りに駐車場や広場を配置することで周囲からの“引き”をとって近隣住宅地への圧迫感を抑えつつ、コンパクトで機能的なプランニングを行っている。商店街や近隣住宅地とは元々小学校の塀で遮られていたものが、視界の拡がるオープンスペースが出来たことにより開放的で接しやすくなっている。
 食堂、カフェテラス、市民交流サロン、保健センターの入る交流棟は、南西側大通りに面して細長く配置し、建物を持ち上げて大きなピロティ空間をつくっている。
 これはまちの新しい顔をつくること、開放的であり、雪の日でも集える大きな交流の場とすることを意図してつくられたものである。
 大きなピロティをもつ建物がスケールアウトしていないか気になっていたが、訪れてみると大通り側の街並みにうまく納まっていて、日常的に通り抜けが出来るあかるい空間となっていた。更に、敷地奥の高校グランドに視界が通りぬけ、その活動的な様子が伝わってくる。ピロティとそれに連続する行政棟周囲の駐車スペースはウォーキングを楽しむ市民の場となり、時にはバザーなど行う集いの場となっている。
 威厳を保つのでなく、市民に開かれた地域の拠り所としての庁舎のあり方を示している。
(陶器 浩一)
主要用途 庁舎
構  造
鉄骨鉄筋コンクリート造、
一部鉄骨造
階  数 地上5階
敷地面積
13,755.20u
建築面積
4,329.16u
延床面積
9,676.54u
建築主  黒部市
設計者  株式会社 山下設計
施工者  前田建設工業・桜井建設・
 大高建設特定建設工事
 共同企業体
 第一建設・
 共和土木特定建設工事
 共同企業体
 株式会社 中西電気
 吉枝工業・
 北陸水道工業特定建設工事・
 共同企業体

一つ前へ戻る