所在地 :石川県金沢市高尾3−4−1
 金沢市街のはずれを走る幹線道路に面して設けられた、老舗布団店のショールームである。商品の並ぶ一般的なショールームだけでなく、ダイニングやフラワーショップを併設し、商品である布団で実際に眠ることのできる体験型の宿泊機能も備えている。
 敷地の輪郭は不整形な上、3m以上の地盤の高低差があり、プランニングはかなり難しかったものと想像される。地盤の高い幹線道路側に道路に沿って東西に直線的にのびる木造平屋のカフェ棟(ダイニング、フラワーショップ)が、崖地になった敷地の奥側に地下1階・地上2階の塔状のRC・鉄骨混構造のギャラリー棟(ショールーム、宿泊)が配される。2つの棟はオープンな渡り廊下によって繋がれ、全体として中庭を囲んだL字形のプランとなる。
 カフェ棟はスパン3.6mのヴォールト状の屋根がかかるユニットが一単位となって、それが9単位連結することで構成される。交通量の多い道路側の立面は極力開口部を絞り、粗い表情のレンガタイルで仕上げられ、石で設えられたヴォールトのけらばと相まって、モダンともエスニックともつかない無国籍な佇まいである。
 一方庭に対しては大きく開き、リズミカルに連なるヴォールト屋根が、屋外にさしかけられた天幕のような、軽やかで包まれるような空間をつくりだしている。急峻な斜面を丁寧にしつらえた中庭が、敷地周囲に広がる住宅街に心地良い緑景とオープンスペースを提供している点も見逃せない。
 建築の内外仕上げには既製品をほとんど用いず、大工や左官職人の手間と技量を存分にそそぎこんだ各種の仕上げは実に見応えがある。石川県内外の工芸作家と共同し、彼らのユニークなガラスや木工作品が建築空間に自然に組み込まれている点も好ましい。設計者だけでなく施主、施工者の作り手の誇りと心意気に満ちた佳作である。
(柳沢  究)
主要用途 事務所、飲食店、物販店
構  造
物販店
鉄骨造+鉄筋コンクリート造 事務所、飲食店
鉄骨造+木造
階  数 地上2階、地下1階
敷地面積
1,260.23u
建築面積
266.50u
延床面積
393.50u
設計者  株式会社 石田屋
施工者  株式会社 三角屋
施工者  株式会社 豊蔵組

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