所在地 :静岡県浜松市天竜区二俣町二俣2396
 郷土の偉人、本田宗一郎を育んだ「天竜川が大きく蛇行する雄大な景観」の只中を、アプローチすると、川原沿いに、小高く延びる分厚い森の中に、乳白ガラスボックスがランドマークとして現れる。その隣、森に潜むようにガラス屋根の1部が見え隠れする。好対照を成す2棟が本社屋とROKI Global Innovation Center-ROGIC-。敷地の奥に、聚楽風左官塗の独立壁、続いて長い彩色左官壁が両脇に立つブリッジ、この建物の4階・最上階に直接入る、エントランス。多目的大会議室に足を踏み入れる、河からの風を受けて大きく孕むシェルター“フィルトレーションルーフ”が、最下階の池に向かって下り、4層の床が見渡せる大きな吹き抜け空間を覆う。木製菱形格子に、障子のように、太陽光を和らげ拡散・吸音する自社製フィルターが張られ、洗練された現代的和の趣。コーヒーブラウンでカラーコーディネート、ゆったりと落ち着く空気が満ち、全体を統べている。4層の床は、巧みにずらされ、吹き抜けを介して、異部門の研究者たちが接触・交流・刺激を受け合い、気ままに居場所を替える、大きな1つの開放感の中に、性格の差異を施された領域性を創っている。フリーアドレス式の連続作業机や長大机、遮音壁付一人掛け椅子、丸机、L型ソファーコーナー、観葉植物などの家具や装置によって、自由な居場所の選択性を演出している。各階両妻側と最下階の随所に外気に開放されたデッキが配され、研究・開発・発想活動に、シームレスで上質な内外にわたる環境を提供。固有の場所の魅力を引き出し、大都市圏外だからこそ可能な、森の中の散策路・池沿いの小道・水辺のデッキ・月見台を含めた「潜在意識を揺さぶる別天地」を用意して、より優秀な人材を引き寄せ、国際的な企業競争に立ち向かう、本田宗一郎とは竹馬の友であった創業者の心意気を具現して、秀逸。
(笠嶋 淑恵)
主要用途 事務所(研究所)
構  造
鉄筋コンクリート造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造
階  数 地上4階
敷地面積
67,510.55 u
建築面積
3,998.96 u
延床面積
8,319.84 u
建築主  株式会社 ROKI
 代表取締役社長 島田 貴也
設計者  株式会社 
 小堀哲夫建築設計事務所
 代表取締役 小堀 哲夫
施工者  大成建設株式会社
 代表取締役社長 村田 誉之

一つ前へ戻る