所在地 :静岡県御前崎市
 御前崎灯台の西、約250m、大きく太平洋に向き合う風景に建つ、仕事場兼用の小住宅「どのように、この景観・眺望に関わり合うワークショップか?」と、大いに関心を持って、現地審査に向かった。この建築は、外観はシンプルな箱、約76u、矩形の内部空間を、工法の合理化を図る「910ピッチのシステマティックなサンドパネル」による構造計画によって、曲面パネルを使用することなく、半月形とその余白に分割。半月形の内に、プライベートな諸室と耐震要素であるサンドパネル壁、開放型収納とをコンパクトに集約。その外側は、定石通り、広がり感が生まれ、海側と道路の両方に、視線が抜け、開いていく空間。ここは、主にL・D・Kと、料理教室にフレキシブルに兼用、時には、夫の主宰する集まりも催される。特筆すべき点の第1は、「潔いワリキリ」 余分な雑音を発する要素は、バッサリ削除、或いは、存在を消している。例えば、料理教室を開いているときに帰宅した夫は、ワークショップを通り抜けなければ、自室へ行けない・・・社交を拡げるという考えか?将来、もしも子供が生まれたら、この住居を店舗として賃貸し、別の場所に住居を造る、等々クライアントのワリキリの良さ。第2は「要素の限定」 内装は、白い塗装とグレーがかった赤味のラワンの2色。外部空間も自由曲線で区切られた、ピンコロ石+山砂の茶色、砕石のグレーと、芝張り+中木1本の緑の3色。長大作業カウンターを支持する脚は極細。コンセントやスィッチは、組み合わせ可能な小型の矩形でコンパクトに集約。取り外し可能な、洗濯物干し竿掛け金物、等々部品はシンプルデザインで統一。曲面状に白色紗のカーテンを閉めれば、910ピッチで架かるサンドパネル小梁がつくりだすリズムだけが際立つ、スタイリッシュな空間。ワークショップというネーミングから想像される空間は、人により、分かれるものかもしれない。住居から失われた自前の「アイデンティティー」の表出・溢れ出し、か或いは、スタイリッシュな無色。そのような流れに、抵抗するワークショップかと思いきや、非都市的な風景にフォトジェニックなインテリア空間。実際は、防風林に阻まれて、太平洋に向かうワイドビスタは望めない。“ランドスケープに越境”するには、何か“仕掛け”が要る。
(笠嶋 淑恵)
主要用途 住宅
構  造
木造在来工法
階  数 地上1階
敷地面積
559.42 u
建築面積
75.36 u
延床面積
75.36 u
設計者  株式会社
 エムエースタイル建築計画
  川本 敦史 + 
  川本 まゆみ
施工者  株式会社 小澤工務店
  小澤 勝司

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