第42回 一般部門 入賞

所在地 :長野県駒ケ根市下平2901
長野県立こころの医療センター駒ヶ根 (撮影:増田 寿夫)
 人のデリケートな深層部分のケアを行う病院「こころの医療センター」は、今までの閉鎖的で隔離された精神病院とは大きく異なっている。
 その違いは、建替えにより今までの病院に比べ病床を55%減らし、長期入院ではなく「地域に帰るための病院」となっている点である。
 駒ヶ岳モールと名付けられた受付や診察室が面するメインの通りは吹抜けから光が降り注ぐ大空間となっており、カフェコーナーがあるなど街の賑わいを演出されている。
 病棟のナースステーションはオープンスペースとなっておりスタッフと患者が近い距離で接するなど、精神病院の隔離された扱いではなく患者が日常生活に戻れる為の新しい試みが随所に見られる。
 外来患者と救急患者との動線を別けるが、医療側では同時に対応出来る配置となっており、また病棟室には光庭を設けて休憩できるベンチを配置するなど、駒ヶ根の自然が楽しめるプランになっている。
 病室は木を多用した内装で、窓には障子が付いているなど寝室に居るような室内となっており、患者にも勤務する側にも動きやすく心が休まる造りは、既存病院の休業無しの建替えの過程や、厳しい制約の中の計画とは思えない巧みな構成である。
 限られた予算の中で、外断熱とタイル貼りを採用してランニングコストを軽減し、既製品や規格材を要所に上手く取入れて、耐久性や使い勝手の良さには妥協せず、将来の変化にも対応出来る造りとなっている。
 低層で勾配屋根の連続する外観は南アルプスと中央の山に挟まれた雄大な自然に調和し、たたずんでいる。
 開かれたこころのケアを行う病院へ通う患者の数は月ごとに増加し、県外からも通院する人が増えているようだ。
 建築の質の高さだけでなく、地域に根ざし住民に必要とされているこころの医療センターは中部建築賞としてふさわしい施設である。
(川口 亜稀子)
主要用途 病院
構  造 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
階  数 地上3階
敷地面積 39,555.59u
建築面積 6,985.77u
延床面積 10,184.68u
建築主 長野県立こころの医療センター駒ヶ根
 院長 樋掛 忠彦
設計者 株式会社 共同建築設計事務所
 専務取締役 鈴木 慶治
施工者 株式会社 岡谷組
 代表取締役 野口 行敏
株式会社 ヤマウラ
 代表取締役社長 山浦 速夫
金澤工業株式会社
 代表取締役社長 金澤 久仁彦

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