第42回 一般部門 入賞

所在地 :愛知県名古屋市名東区代万町3丁目10番1
 この建物は郊外住宅地の一角にあり、幹線道路である名東本通からまさに一歩入った場所に立地する、オフィス・ショップ兼自邸である。北垂れの敷地にあり、その高低差を生かして4階建(北側)と3階建(南側)の棟の垂直的ズレと平面的ズレから生まれるスキマをテーマにした建物である。それをスラブの位置と壁のV字型デザインによって外観からわかるように表現している。
 1階はショップ&ギャラリー(予定)、2階は自邸、3・4階はオフィスの利用がなされているが、同一階でも北棟と南棟で敷地形状から生まれる1m前後のズレを敢えて修正せず、スキップフロアとしている。2棟を接合するズレの部分は階段、あるいはテラスが配置されているが、とくに3・4階の接合部は屋外空間であるため、風の道となり、心地よい風が吹けば、最も快適な場所となる。ズレとスキマの効果を最大限生かすためには、この空間をもっと豊かにつくり込めば、一層魅力が増したに違いない。
 もう一つの魅力はズレとスキマによって、多様な視点場と視線が確保されることである。階段を除き、屋上を含めると高さの異なる11の視点場が生まれている。さらにV字型壁から生まれるスキマを通じて、内から外へ、外から内への多様な視線が交錯することになる。その際、昼と夜の時間変化、私生活と職場の空間区分による内外の視線のコントロールが必要になってくるであろう。
 街との関係性も意識した建物となっている。先に述べたスキマからの内外の視線の交錯も関係性を生むものであるが、さらには隣地および道路の接面には、領域性を強調するのでなく、私と私、私と公との緩衝空間を設けている。同時に建物内部にもレンタルスペースを設けることで地域住民との交流を促進しようとしている。
 この建物が「私」空間としてどのように使いこなされていくのか、また「共」空間としてどのように地域に馴染んでいくのか、楽しみである。
(井澤 知旦)
主要用途 事務所 店舗 住宅
構  造 鉄筋コンクリート造
階  数 地上4階
敷地面積 191.73 u
建築面積 85.32 u
延床面積 267.43 u
建築主 中渡瀬 拡司
設計者 CO2WORKS一級建築士事務所
 代表 中渡瀬 拡司     
株式会社
   藤尾建築構造設計事務所
 代表 藤尾 篤
施工者 株式会社 岡本建設
 代表取締役 岡本 義明

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