審査総評
 本年は大規模な災害など、日本が困難に直面せざるをえなかった年であるが、第43回中部建築賞において応募数は111件と例年通りの高い応募数を示した。
 特に今年の特徴は住宅の応募が増えたということである。若い建築家にとって住宅においては中部建築賞受賞の機会は大いにある。ぜひ今後も多くの作品の応募を期待したいところである。建築家が評価を問うということは極めて重要なことである。その理由として次の5つの理由をあげることができる。
 第一に建築家の作品が生まれる過程の問題である。建築家は常にクライアントがおり、公共的なものであれ、民間的なものであれ、自らの金で自分の作品をつくることは少ない。そのデザイン行為、設計行為による報酬は常にそれを保証する人や機関が存在する。したがってその作品、その設計行為の結果物は適切なものであるかが、常に問われるものだということを認識していかなければならない。設計という行為は自己満足的なものであってはならないことを認識する必要がある。第二に建築家の作品は特定クライアントによって生み出されるが、その結果としての建築は社会資産となる。社会的な存在である。施主のみでなく、社会的に有用なものであるかを常に問われる。美しく、機能的で、安全であって、利用する人に快適であり、次世代を育む環境となっているかということが問われる。また地球の資源を使用する者として、その使用方法、またエネルギー消費が適切かという地球環境的側面での評価も近年特に重要な評価的側面といえる。第三に建築家は常にその能力を研鑽し、向上するために努力しなければならない。建築家は常にその能力を磨かねばならない。自らの設計の結果を社会的、芸術的、機能的に評価を受けることは、自己研鑽、自己努力を評価されることである。第四に建築家は作品を通じて、次の作品を創造する機会を得ることができる。第五に建築家は表現者として、創造者として常に活動する。そのためその作品を多くの人々に知ってもらう努力をしなければならない。
 本年は本賞として11作品、奨励賞として7作品、特別賞として3作品が決定された。今回受賞を逃した作品にも優れたものが多くあったことを付記し、さらなる挑戦を期待したい。そして多くの応募者の皆さん方のご努力に感謝したい。
(仙田 満)

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