所在地 :静岡県磐田市 |
ゆるやかな傾斜をもつ小山の麓にナオ・ハウスがある。そこには両親と祖母の家、さらに兄の家が建ち、小山(裏山)が3つの家族と4つの世代(祖母、両親、兄弟夫婦、そして子供たち)を結びつけている。裏山は雑木林であり、庭園であり、芝生広場であり、冒険広場であり、家族の絆の広場である。 ナオ・ハウスは公道からみた景観は3階建(地階+1・2階)であり、裏山からみた景観は平屋である。それだけの高低差があるため、地階にはコンクリートで基礎を兼ねたガレージ兼エントランスを設け、その上(厳密にいえばリビングより上部)に木造で居室を構えている。 1階にはダイニングとリビングが、2階には主寝室と子供部屋がある。ダイニングとリビングには100cmの段差を設け、二つを空間的に区切るとともに、エントランス(地階)からの高さを抑えている。その結果、この段差(5段の階段)が収納スペースとして活用されるとともに、腰かけることで、ダイニング・キッチンにいる家族との対話、あるいは東に広がる風景を眺める観客席にもなる。高低差を不利とせずに、むしろ有利に活用している。 西側に配置されているリビングは、160cmの軒の出を設け、かつ軒先の高さを187cmに抑えることで、西からの日射しをうまく避けている。しかも、西に広がる裏山風景を阻害してはいない。むしろ裏山と一体となったリビングの全面ガラス窓から見える風景は、すべてが緑で覆われるよう切り取られることになる。その結果、緑に包まれる抱擁感を演出し、心の安らぎを与えている。 2階の主寝室や子供部屋から半階下のリビングが見下ろせる。リビングを中心にして半階下のダイニングと半階上の子供部屋等が結ばれる。家族をつなげる要(かなめ)の役割をうまく演出している。 家族を大切にする住まい、親や兄弟の絆を大切にする敷地。大家族から核家族に変容していった20世紀だが、ここには21世紀の新しい住まい像、家族像が示されている。 |
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(井澤 知旦) | |||||||||||||||||||||
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