審査総評
 第42回中部建築賞の応募作品は一般が46点、住宅が45点であった。ほぼ例年並みといえる。昨今の建設業界、経済社会状況からすれば、多くの方々に注目していただいている証左であるといえる。第1回審査会を9月14日に行い、現地審査対象作品を選び、約4週間かけて審査員が手分けをし、現地審査を行った。第2回審査会を10月15日に開き、現地審査の報告をもとに議論をし、一般部門入賞作品5点、入選作品4点、特別賞作品1点、また住宅部門入賞作品3点、住宅部門入選作品6点、特別賞作品1点を決定した。昨年と比較しても高レベルでの審査だったと思える。
 一般部門では今年も多くの小・中学校の応募があり、入賞1点、入選1点、特別賞1点の計3点が受賞している。中部地区に教育施設の新しい挑戦があることはとても頼もしいところである。特に村という小さな自治体が、住民、教育委員会、学校が一体となってプロポーザルを行い、設計者とワークショップを重ねて、子どもたちが学校に来るのが楽しくて仕方がないという空間を実現した努力には敬意を表したい。また、やはり町立のエコ改修は、他の専門学校までも巻き込み、町民総出で地球環境にやさしい学校への転換をはかり、その過程を含めて環境教育を推し進めた点が特に評価され、特別賞が与えられた。
 中部建築賞では、住宅においてさまざまな取り組みがなされている。小規模、工場生産、増築、移設というテーマに対して果敢に取り組んだ住宅が特別賞を受賞した。そのメタボリズム的な発想は50年前の概念である。しかし少子高齢化、国際化、人口減少化という流動化、変化の激しい現代日本社会の問題は、その当時とは異なる社会背景ではあるが、再評価されつつあり、その点でも大変ユニークでおもしろい試みと思われる。
 学校、図書館、研修所、博物館、障がい者施設等が受賞したが、今回いわゆる業務施設、集合住宅、商業施設が残らなかった。経済環境が厳しい我が国の状況において、賞にふさわしいレベルにこれらの分野がなっていないと読みとることもできる。しかしながら住み、働く施設が高品質でなければならないのは当然で、厳しい環境だからこそ新しい技術開発、アイディア、デザインが求められる。今後の関係者の挑戦を期待したい。
(仙田 満)

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