所在地 : 三重県桑名市大字赤須賀 地内
 桑名の赤須賀地区。揖斐・長良川に面する小さな港。周辺には佃煮の店がいくつもある。伝統の色や香りをとどめる地域だ。堤防の補強事業にあわせて計画されたこの建物は、名産のはまぐりをテーマにして、観光交流のための展示室、公民館、漁業協同組合の三つを結びあわせた地域振興拠点である。
 建物は三棟に分かれて見えるが、実は一階でつながっている。周辺の家並みのスケールに合わせる工夫だ。堤防の高さにあたる二階にデッキを廻らせ、仮想の地表面をつくって、そこから三階、四階へとデッキを連ねていく。棟のあいだを吹きさらしの通路にして、堤防側、港側へと交互に視線をやりとりさせながら、自由に建物に出入りする。漁村特有の路地を立体的に再現しようという意図なのだろう。
 単純な切妻が並んだたたずまい。敷地は河岸の軟弱地盤。軽量化のため構造には鉄骨ALCが選ばれた。その上に意匠的な外壁、杉の小巾板の壁がかぶせる。ラフな肌ざわりの素材を、平滑繊細なディテールで納め、肌理を細かく整え、輪郭の明瞭さを強調する。
 「闘い」の痕跡らしきものも眼に入る。もとの構想では、デッキは伸びやかに広がって堤防まで連続し、さらに車道をまたぐブリッジが提案されていた。完成した建物にはこれらはなく、キャンティレバーで持ち出す一周分のデッキが残るのみ。道路設計とのすり合わせの不調か、あるいは単に予算の限界のせいか。かわりに付いた地上から二階へと直接登る外部階段も、立入禁止のロープで無造作に閉鎖されている。見上げると、竣工写真にはない「は ま ぐ り プ ラ ザ」の大きなプラスチック文字。
 建築家がこれだ、と思っても、その設計意図を実現することはいつだって難しい。土木工事との同時進行なら、なおさらだとも言えるかもしれない。でもそれは半面の常識に過ぎない。本当は同時進行だからこそできることもある。そしてそれは構想図に確かに描かれていたのだった。
(富岡義人))
主要用途 複合施設
構  造
鉄骨造
階  数 地上4階
敷地面積
1,480.91u
建築面積
690.68u
延床面積
1,434.36u
建築主 桑名市
  桑名市長 水谷 元
設計者 株式会社内藤廣建築設計事務所
  代表 内藤 廣
施工者 株式会社伊藤工務店
  取締役社長 伊藤 コ宏

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