所在地 :富山県高岡市 |
都会で暮らしながら宅地を買って家を建てることを夢見ていた若い夫婦が、子供の誕生を期に、山間で暮らす祖父や両親の姿を想い起こして「実家での同居」を決意した。「古くなった建物を残しつつ、美しく、明るく、気持ちよく、子供が走り回れ、防犯、プライバシー、癒し、風景を切り取る、自然素材・・・」のように若い夫婦の夢は膨らんだ。この「風景を切り取りたい(プライバシーを確保しつつ周囲の山並み・緑・星空だけを内部に取り込みたい)」という強い欲求が基本コンセプトとなり、インナーテラス・LDK空間と改造された既存続き間空間が一体となって『山間のコートハウス』が巧みに具現化されている。母屋の半分と別棟を解体して若い家族の生活空間を増築し、両親が暮らす既存母屋との接続部分にコートハウス空間を創り出しており、正面ファサードはやや閉鎖的ではあるが、残された母屋の屋根と外壁は既存のまま維持され、両親が暮らす居室部分(続き間空間の奥に位置する和室と縁側)は畑を介して地域に直接開かれている。 ログビルダーの経験をもつ家具職人の若い主人は、「優しさ」「柔らかさ」を求める妻の期待にも応えて全ての家具を手作りし、内装仕上げにも挑戦している。設計者と施工者は、信頼されるパートナーとして家族の夢の実現を手助けし、既存部分の改造に関わる専門的判断(構造的補強や敷地高低差の処理)に加えて「住み続けながらの施工」という課題を克服するなど、施主・設計者・施工者の協働による「住まいづくり」が展開された。若い主人は「10年後に自分たちでリフォームしたい」と語っている。家族の住まい方と山間での暮らし方にも変化が予想される10年後には、基本コンセプトである「コートハウス」の意味合いも変化していることであろう。その変化した姿を見ることをも楽しみにさせる「手作りの住まいづくり」の秀作である。 |
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(桜井康宏) | |||||||||||||||||||||
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