所在地 : 福井県三方上中郡若狭町田井24号三通北
 建物は若狭湾国定公園の代表的景勝地「三方湖」に接した集落内に位置し、周辺は水田と特産の梅畑になり周囲が小高い山で囲まれた風光明媚な場所になる。施設は高齢者や障害者、近隣住民や子供たちなど多様な利用者が居住滞在交流できる場として計画された。 建物の配置はデイサービス棟、特養棟、ケアホーム棟の3区画に別れ、施設の顔で一般利用者の多いデイサービス棟は正面の来客用駐車場やバス停側に近接し、長期滞在となる特養棟とケアホーム棟は落ち着ける環境が必要な事から公園を中央にL字型に配されて公園側に面した渡り廊下で結ばれる。周囲には庭や花壇を造り積極的な緑化を行っている。
 外観はデイサービス棟の方形屋根、特養棟やケアホーム棟の雁行型、渡り廊下の片流と変化に富むが、建物周囲は基本的に1間前後幅を土庇としているため、連続した柱列と陰影のある深い軒を造りだし、軒高を低く抑え三寸五分の緩い勾配で葺かれた銀鼠色の瓦葺き屋根は、珪藻土調の櫛引きの外壁と相まって落ち着いた和風意匠を醸しだしている。ただ、土庇列柱が端正な和を強調しているだけに正面の方杖付き列柱や車庫が惜しまれる。
 室内は公共空間を広々と吹抜けにして柱や梁及び床や天井には木材を多用してぬくもりのある空間とし、共同生活や居住空間は利用者にあたかも自宅に居る安心感をもってもらうためにヒューマンスケールを用いて計画されている。また、暗くなりがちな大広間や中廊下はトップライトや高窓による自然採光で日中も明るく、外部に面する開口部も広く取られ自然換気や通風が行われており、曖昧模糊な土庇空間は縁側的な交流の場となる。
 建物は植栽まもない樹木で囲まれまだ不自然さが残るが周囲の環境と調和しており、今後、建設予定の保育所や小学校が関わって三世代交流が行われる数年後の姿が楽しみだ。
(上野 幸夫)
主要用途 高齢者福祉施設・障がい者福祉施設
構  造
木造 一部鉄筋コンクリート造
階  数 地上1階
敷地面積
17,149.78 u
建築面積
5,160.06 u
延床面積
4,061.35 u
建築主 若狭町
設計者 株式会社現代建築研究所
藤田富雄建築事務所
施工者 五洋・前田・浦見川共同企業体
株式会社前田産業

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