所在地 : 三重県いなべ市大安町石榑南611番地

 大安町のある「いなべ市」は三重県最北端、滋賀・岐阜県との県境にあり、鈴鹿山系と養老山地の間を流れる員弁川流域に、のどかな田園地帯が広がる。大安駅に向かう途中の車窓からは建売住宅やアパート、工業や物流施設が見られ、四日市・桑名、名古屋都市圏の影響が伺われるが、ここは農村色が色濃く残っている。改札を出て振り返ると図書館と一体に建てられた一見オリエント風ファサードの平屋建駅舎がユニークだ。対象となる小学校は大安駅から車で約15分、鈴鹿山系竜ヶ岳から東に緩やかに傾斜する田園地帯を背景に、山裾の集落地に至る生活道路に沿って建っている。
 一見、かまぼこ屋根と見られる形状は周囲の茶畑をモチーフにした。車の通行する道路沿いの低い塀の他は、校地に自由に出入りできる。老朽建て替えの用地確保にはじまり、町民ぐるみで計画されたコミュニティ施設でもある小学校の安全は、町民がまもるという強い決意の表れでもある。
 参加型建築はしばしばデザイン・アイテムが過剰となりがちなことが危惧されたが、むしろ現場に立つと、ここで育ち、町で暮らす人々の思いがこもった暖かみを感じる。敷地の勾配を活かし、上手グランドレベルを学校の基準階、2階とし、下手の玄関、1階は地域の人々が利用できるパブリックゾーンとして区分、囲み型配置校舎の中央に上手と下手をつなぐコートを象徴的に配置している。教室は廊下側に壁のないオープンスクール式を、事例視察を参考にして採用した。内装は木を多用し、外装は柔らかい土色のタイルをRC打放に織り交ぜて、柔らかい印象を醸し出している。
 地元の熱意が無ければ、こういう学校は出来なかったと言う教育委員会職員の意見が印象に残る。

( 尾関 利勝 )
主要用途 小学校
構  造
鉄筋コンクリート・一部鉄骨造
階  数 地上 3階 塔屋 3階
敷地面積
24,634.16u
建築面積
4,360.00u
延床面積
5,669.00u
建築主 いなべ市長
設計者 株式会社石本建築事務所 名古屋支所
施工者 戸田建設株式会社 名古屋支店

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