この作品は、交通量の非常に多い幹線道路沿いの自動車販売のためのショールーム、サービス・ステーションである。建築主と設計者および施工者は、これまでもいくつかの店舗をシリーズとしてつくってきており、三者間の良好な信頼関係がうかがえる作品であった。おそらく営業的な成績と、建築の独特なアピール度がうまくマッチした結果がそのような関係を生んできたのであろうと想った。
　２枚の板が折れ曲がりながら絡み合い空間を生み出すという手法は、プログラムがそれほど複雑ではないとはいえ、巧みであり作者の力量が十分に伺えた。とくに折版と鉄骨のポストの架構は、ディテールや施工性等において卓越した処理が感じられた。
　書類審査の時点では、写真から受ける印象がセルフコンシャスすぎて、周辺の住宅地に対して配慮に欠けるのではないかという意見が多かった。実際現地で見ると、建物のスケールが思ったよりも小さく、しかもドブヅケの折版の色や凹凸の形が周辺住宅の瓦屋根に非常に近く、不思議な調和を醸し出していた。また、建築表現そのものが類似施設に対してすでに差別化を図っているということもあってか、看板やサインの色や大きさなどが、この種の店舗にしては非常に押さえられていて、これもシリーズの積み重ねの実績を物語っているようで好印象をもった。一方、鉄板一枚で内外を分けるという仕様が、断熱材を塗布しているとはいえ、真夏の居住性や省エネルギー対応に疑問が残った。