所在地 : 愛知県瀬戸市吉野町304−1 |
年に開かれた愛・地球博会場のひとつであった瀬戸会場、海上の森に位置する。博覧会時は瀬戸愛知県館として、現施設の上部に鉄骨と木による仮設部が乗せられ、博覧会終了後は仮設部分が撤去されている。建築計画当初からこのような恒久的施設を目論みながら仮設構築物を造るといった試みは、これまでに例を見ないユニークな発想の建築である。なお、ここで使用されていた木材の大半は、元の木材産地であった地元小学校で再利用されているという。まさに博覧会の「環境」をテーマにそった一端を示している。現在の建物は段状傾斜地に横たわるように建築されており、展示スペース、情報ライブラリー、研修室、工作室等で内部は構成され、森林や里山に関する学習と交流の拠点施設として再出発されている。 この建築が建つ海上の森は、かつて焼き物の製造のための薪の採取などにより、樹木のない荒廃した山であったが、明治以降の先人たちの努力と自然の力によって緑が回復した歴史を有する森であった。こうした歴史的経緯を尊重しつつ、計画当初から会場の環境調整を如何にすべきかが最大の課題であった。このため現地の地質や水脈を読み、生態を観察し、建築の形態や材料、工法を決定し、樹木を伐採せずに移植するなど環境配慮の工事を行って完成したのである。もちろん、こうした地道な作業を伴った過程において、環境問題に関心のある市民を中心に、設計者、施工者、県関係者らが一体となって取り組んだ成果である。その意味において、この作品に関わったすべての人々を大いに賞賛し、敬意を表したい。 |
|||||||||||||||||||||
( 中 森 勉 ) | |||||||||||||||||||||
|
|