世界的ビック企業である自動車メーカーの事務本館が受賞対象建物である。 地上15階という本社ビルにしては堅実な外観をもった中層の建物であり、内部機能を的確に表した外観は周辺に配慮したゆるやかな曲線をもち、日照調整の東西面の縦ルーバーと南面の横ルーバーが外観にひだをつくり、巨大スケールのわりに穏やかな印象を与えている。限られた敷地条件のなか、配置計画では狭いながらも来館者を迎える植裁のある前庭をとり、ダイレクトに建物へ視線がぶつかることのないよう、クッション性をもたせていることが心地良い。 平面計画に移ろう。コンパクトに計画されたプランは、コア部分を中心にオフィス部を南北両ウイングに分け、2つのオフィスゾーンをつなぐ曲面部に会議室を配して明解な平面構成を作っている。コア部には、この計画のポイントであるバーティカルヴィレッジと呼ばれているスペースを2ヶ所つくり、階段による人の上下動と吹き抜けによる自然換気及び職員の情報交換の場となっている。オフィスゾーンは、従来5u/1人を7u/1人に広げ、ゆったりした機能的広さを確保、全面床送風空調方式により、人にやさしい執務空間をつくっている。 ドラフト効果を考えた吹抜、地下食堂に自然光を採り入れる巨大光ダクト、オフィスのグラデーションルーバー等々、ローテクによる環境・省エネ対策の一方、ハイテクを駆使した省エネ効果も活用し1年間の実測値33%の削減ができたという。何よりもプロポーザルによる提案から工事完成まで2年弱という超短期間工期も、このような建物には大きなファクターをしめるだろう。 世界トップの大企業・全国ネットの大組織事務所・スーパーゼネコンと、3者共同の力を結集した、「オフィスビルはかくあるべし」との答えをだしている好事例である。この巨大オフィスビルが、これにさらに人間性を加味して発展していくであろう先駆けとして評価される。