所在地 : 長野県茅野市北山4035-949 他15筆

 多くの企業が財務会計の観点から不良資産とみなされる恐れのある保養所を処分する傾向にある昨今、蓼科高原も別荘地としてのかつての活況が嘘のような状況にある中、あえてこの地で職員のための福利厚生を充実するため、開発された宿泊型のリゾート施設である。もと種畜場であった起伏ある土地形状をできるだけ活かし、伐採も極力抑えつつ、全室で八ヶ岳連邦を望む絶景が得られるべく配置が決定された。フラットとメゾネット、コテージなどが用意されており、簡素だが上質のインテリアが実現している。
 エントランスから宿泊ゾーン、各部屋から敷地内の散策路、あるいは屋外テラス、ダイニング、展望浴場、アメニティ施設へのアプローチなど、おのおののシークエンスに沿って、ストレスなく快適に演出が施されている。
 ちなみに当施設の予約状況を見ると、オフシーズン以外はかなり混み合っている状況であり、チェックアウト時に次の宿泊予約をしていくリピーターも多いらしい。企業グループの共同出資の会員制ホテルという手法で運営されているため、相場の約半額で利用できる点が人気を集めていると見られる。最近さまざまなサイトで宿泊施設利用者の声を載せている例が多く参照されるが、当施設も満足感を表明しているコメントが多く、なかには自分の終の棲家の理想像はこの地にあるのではないか、まちなかでこのような家を作りたいというコメントを寄せているのに驚かされた。80u程のメゾネットの中に充分な居住スペースとユーティリティが設えられ、よく吟味された家具が置かれた上質のインテリア、最良の眺望と行き届いたサービス、最小限の品々で暮らした、非日常的な環境で体感したこれらの経験を、日常生活で再現したいという願望は、やがて利用者の生活観に変革をもたらすかもしれないと思われた。何よりこのような環境を職員とその家族に提供すべきと努力している企業の経営姿勢に敬意を表したい。

( 谷口 元 )
主要用途 リゾートホテル
構  造
鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造・木造
階  数 地上 2階
敷地面積
102,812.09u
建築面積
4,705.62u
延床面積
7,057.10u
建築主 株式会社トヨタエンタプライズ
設計者 株式会社日建設計
施工者 清水建設・トヨタT&S建設共同企業体

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