名古屋大学野依記念      物質科学研究館 学術交流館
所在地愛知県名古屋市千種区不老町名古屋大学東山団地構内
物質科学科学研究館  写真撮影者:阿野 太一 -Dichi Ano-
物質科学科学研究館

学術交流館  写真撮影者:阿野 太一 -Dichi Ano-
学術交流館

 名古屋大学野依センターは、野依良治教授のノーベル賞受賞を顕彰し、その功績を後世に継承・発展させていくために、同大学東山キャンパス内に建てられた施設群である。その施設群は、「野依記念物質科学研究館」(以下研究館と略す)と「野依記念学術交流館」(以下交流館と略す)という、全く異なる二つの性格の施設から成る。しかも両者が建つ敷地は100m近く離れており、かつキャンパス道路で分断されているという、厳しい与条件下での建築プログラム提案が成されたものである。
 前者の「研究館」は、7階建ての高度な実験と解析研究を行う研究室群とノーベル賞を記念する展示室、講演室、野依教授の執務室などの諸室、事務室等で内部が構成されている。殊にユニークなのは建物の中央を横断するメカニカルスリットと呼ばれる外部吹き抜け空間に、設備配管や実験ダクトを集約して配置しているところである。この手法によって周辺施設にみられるプラント工場的な風景を造らず、景観的な配慮や、メンテナンス的にも利便性を高めており、優れた解決策を提案されていて賞賛に値する。
 建築造形は周辺の既存施設群と比べ、ひときわ異彩を放っている。それは東面に巨大で緩やかに湾曲したガラスの壁面を立ち上げたダブルスキンの表層で、モニュメンタルな造形を呈している点である。そしてシンボリックに突き出た5つのボックス(展示室や会議室を内包)は、建物のファサードにある種の緊張感をもたらしている。そこには、無味乾燥なキャンパス景観への警鐘と同時に、大学キャンパスの未来性を予見するデザインが込められているように思われる。

 もう一つの「交流館」は国際的なシンポジウムが開催できるホールを含む情報センター機能、さらに海外からの招聘教授が半年から1年程度滞在するゲストハウス10戸が併存するという機能をもった施設である。この施設においても全く異なる2つの機能を一体化して包含しなければならないという命題が課せられていたが、それを見事に解決している作品である。
 建物は雑木林の谷間に抱かれるように、非対称の楕円平面に、全面をガラスのカーテンウォールとした形態で建てられている。1階は可動間仕切りにより分割できるフレキシブルな情報ラウンジを配し、それを2層吹き抜けの回廊が囲む構成である。こうした構成によって、情報ラウンジは雑木林の渾然一体となり、静謐な空間が醸成されている。2階に200人規模のホールを置き、この1、2階でパブリックな交流空間を造っている。そしてプライバシーの高いゲストハウス群は、ホールの屋根に載せるように建てられている。単純に居住空間を載せただけでは、給排水などの設備の処理ができないが、ここではホール屋根を言わば、二重スラブ化を図り配管スペースを確保し、地下の処理漕へ集約されている。但し、居住区への縦動線は別ルートによって設けている。
 さて、機能が異なる2つの施設は、緩やかなカーブを描いく一枚のガラスウォールで繋がれているが、「研究館」の湾曲したガラスの曲率の延長上にある。しかしそれは単なる図上操作によるデザインではなく、「研究館」と「交流館」を繋ぐ「人的動線の連結」と「視覚的連結」の2つ機能を具現化したものである。
(中森勉)
主要用途 大学・研究施設・会議場・
研究施設
構  造 [研究館] SRC造
[交流館] S造
階  数 [研究館] B1F 7F
[交流館] B1F 4F
敷地面積
381,784.40u
建築面積 [研究館]   1,316.28u
[交流館]   1,281.76u
延床面積 [研究館]   7,117.00u
[交流館]   3,485.00u
建築主 名古屋大学
設計者 株式会社 飯田善彦建築工房
施工者 [研究館] 銭高・伊藤工特定建設
工事共同企業体
[交流館] 小原建設株式会社
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