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浜名湖を見下ろす丘陵上にある、人材育成・研修施設である。大手自動車メーカーが海外に拠点を設け、そこでの中心人材を育成・研修する、いわば外国人のエグゼクティブを中心とした人々が生活し研修するスペースである。そのために、それにふさわしい家具調度を整え、細部意匠や空間配置に日本的な要素を盛り込むことで、全体的印象を決定づけている。 平面計画的には、丘陵地の勾配を利用しつつ、長いくらいの直線的な宿泊棟と研修・会議が行われる弧と円形を含む研修・会議系の棟との組み合わせが融合されている。敷地形状と地形に制約されている状況をこれらの配置で解決しようと試みられている。 室内的には、エントランスの壁面等に始まる和を想起させる意匠を試み、もてなしの空間の演出に意を注いでいる。そして、海外の各地から参集するエグゼクティブを意識した重厚な雰囲気の演出が見られる。一方で、環境調節の側面からは、外気取り入れに関しての余熱・予冷効果をねらったサーマルトンネルや大開口面のダブルスキン、そして屋上緑化などが実施されており、環境に対する具体的工夫が意識されている。短工期にて行われたPC利用は、一つには技術的側面としての公用があり、さらに環境への配慮としても望ましい。 工事も敷地の困難な制約条件の中、既存樹木の存置が行われるなど評価されるが、丘陵の尾根筋にわたる利用についてはさらなる考慮も望まれる。総体的に、世界的企業の人材育成の場としての風格を醸し出している作品といえよう。 (堀越 哲美)
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