福井県立図書館・福井県文書館
 所在地 福井県福井市下馬町51−11

 福井市の中心市街地から南東へ自動車を10分ほど走らすと、のどかな田園風景が広がる一隅に低層の基壇状に建物に薄茶色の立方体を載せたような、幾何学 的建築群が目に飛び込んでくる。これは福井県が生涯学習の拠点施設として整備を進めてきた図書館と歴史的に貴重な公文書・古文書の収集保存する文書館が併存する複合施設である。
 敷地規模が約7ヘクタールと広大な面積を有し、緑豊かな周辺環境を活かした「緑の中の庭園図書館・文書館」をキー・コンセプトに設計されている。建物を取り囲む庭園は、ウッドデッキと池を媒介にして、空間的な連続感を持たせ、内部からは床から天井までの全面開口によって明るい開放的な読書スペースをつ くり出すと同時に、庭への視線を誘発させ、安らぎと潤いのある景観が醸成されていて好感が持てる。
 既存の図書館の多くは、何でも詰め込み過ぎていたり、利用者のざわめきが耳に付いたりして本来の読書環境を提供する場になっていない。しかし、この図書館では連日利用者で混み合っているにも拘わらず「本を読む」という図書館の本質的な機能がしっかり保たれていることに驚きを禁じ得ない。こうした静謐な読書スペースを確保できている最大の理由は、この図書館の最大の特徴でもある開架閲覧部門にある。それは利用者の利便性を考慮し、30万冊にも及ぶ開架と閲覧スペースをすべて1階の同一フロアーにまとめ、7メートルを越す天井高とひと続きの空間となっているからであろう。もっとも、ただひと続きの開放感溢れる閲覧空間を形成されているのみではこうした空間性能を得られないのであって、中庭や読書テラス、池などのエレメントをそこに織り込むことによって、各空間領域(一般閲覧、児童閲覧、レファレンス等)が、「間」をつくりながら有効的に分節化され、質的にも量的にも「豊かな空間」が形成されていると考える。この建築によって試みられた手法は、図書館の本来的なあるべき姿を問い直す契機ともなり得るであろうし、その意味でも高く評価されよう。そして周辺ゾーンには既に県立生涯学習館、市立美術館、中小企業産業大学校等が位置し、この図書館が新たに加わったことで、文化・学習の集積ゾーンの中心的拠点になることは疑いない。
( 中 森  勉 )
主要用途 図書館 文書館
構  造 鉄骨造 、鉄筋コンクリート造
一部鉄骨鉄筋コンクリート造
階  数 地下1階 地上4階 塔屋2階 
敷地面積
70,246.00u
建築面積
12,919.44u
延床面積
18,436.89u
建築主 福井県
設計者 株式会社 槇総合計画事務所
施工者 (図書館棟)
前田・松尾・前川・技建共同企業体
(文書館棟)
西田建設(株)・鷹巣建設工(株)
共同企業体

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