石川県西田幾多郎記念哲学館
所在地 富山県富山市呉羽町2247−3
 この施設は富山市呉羽地区の地区公園の中に存在する。公園は、市民の散策と文化芸術活動が気楽に行われる場所として提供されている。まず旧紡績工場の一部を再利用した舞台芸術の練習スペースがオープンした。富山市は潜在的に音楽と演劇活動の需要が高いこともあって、この施設は市民による利用度が高く、すぐに練習室が不足し増設の要望がおきたとのことである。対象となる施設は、この要望に応えて新たに建設された部分(4つの大きさの異なる練習室といくつもの楽器の保管庫、それをつなぐコリドール)と、地区公園内の4つの庭からなるランドスケープである。
 東ゲートより公園に入ると右手にランドスケープとしてデザインされた「記憶の庭」があり、その先に旧紡績工場を再利用した閉鎖的なファサードが大きく広がる。左手にもう一つのランドスケープである「風の大地」を見ながら、この建物を右にして進むと「芸術の庭」へ至る。この庭にはコンクリートの四角な列柱が立ち並び、その先に新棟が存在する。新棟は、練習内容や利用に合わせて広さと高さの異なるいくつもの矩形のマッスで構成され、それらを旧棟と連絡する開放的な観覧コリドーで連結している。これらのバラバラなマッスの立面は、ラティス状に交互に斜めになった黄色い連続パイプ柱で支えられたオープンな円弧回廊でぐるり取り巻かれて、うまく一体化されている。またこの回廊は、前面の駐車場から大型楽器を抱えて寄りつく市民を優しく迎え入れるのに効果的である。さらに、外部と内部、既存ののこぎり型屋根の練習場とを視覚的に遮断することなく、うまく連続させている。機能的な意味でも、旧紡績工場の太い一本の廊下を新築部分の観覧コリドーとつなげることにより、自然な形で連続させている。このような既存の施設との巧妙なつながりと、この新棟部分ができることにより利用者が一層寄りつきやすくなったことが、ここの施設の魅力を高めている。
( 松 本 直 司 )
主要用途 音楽、舞台練習場
構  造 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
階  数 地上1階
敷地面積
94,416.59u
建築面積
1,534.45u
延床面積
1,333.41u
建築主 富山市 
設計者 (株)森俊偉+ARCO建築・計画事務所
施工者 林建設工業(株)・(株)金谷工務店
共同企業体
(電気設備工事)
株式会社 浪速電機工業所
(機械設備工事)
三金工業株式会社

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