明治期に消失した金沢城の内堀に面して、城を守るための二つの物見櫓とそれをつなぐ武器などの倉庫であった廊下部分の復元である。残された資料に基づき文化・安政期の姿に復元された。
 5年余を費やしたこの工事は、明治以降では最大級の木造城郭建築である。組み直された石垣の上に建つその姿は凛々しく重厚である。
 新築復元であるため、日本古来の伝統工法を用いる一方で、建築基準法に準拠した鉄筋コンクリート基礎、防火のためのスプリンクラー、エレベーター、階段などが設置されている。菱櫓と橋爪門続櫓は木造3層3階建、五十間長屋は木造2層2階建、いずれも入母屋造りに唐破風がついている。構造は柱、梁、桁による木造軸組と土壁と貫を組み合わせた壁体によっている。部材の接合は金物を使わず、継手や仕口が用いられたが、80度、100 度の菱形平面をもつ二つの櫓では、職人たちが軸組模型でディテールを検討しながら工事が進められた。二つの櫓と橋爪一の門、土塀を含めて、屋根の鉛瓦葺、外壁のナマコ壁、および、漆喰塗込壁にも伝統工法が用いられている。
 この復元工事は完成した建物の成果に加えて、計画段階から伝統工法に携わる職人が集められ、世代間の引き継ぎが計画的になされ、行政、設計者、研究者、施工者の協力によって技術伝承のソフトがつくられたことが評価できる。そのような意味で特別賞に相応しい作品である。
一つ前へ戻る