楕円形の平面を持つ建物は、敷地である緩やかな勾配の西斜面を造成することなく、段状に床を設けて配置され、木で貼られた外壁は曲面をなして周辺の森に違和感なく溶け込んでいる。
 中庭に入ると右側に木工房と製品展示室、左側にレストラン、工房で作られた木工細工のショップがある。これらが、傾斜した地形に沿った回廊で結ばれている。この野外舞台にもなる中庭からは、東に広がる森の斜面が眺められ、ここを抜けると周辺に広がる丘陵につながる回遊路になっている。
 建物にはすべて現地産の杉材が用いられている。比較的スパンの大きい工房部分には、 四つの部材を組んだ柱に支えられた木とパイプによる混構造の立体トラスが用いられ、 天窓の光が気持ちのよい作業空間をつくっている。建築主の提案に対し、設計者が都市的な建築の完成度を捨て、全体の造形、平面、ディテールなどの非日常的で、且つ的確な解決によって建築主の木への愛情から発したソフトが見事に建築化された木工館は、我々設計者が忘れてしまった素朴な建築の良さに思いを致す機会を与える作品である。
( 藤 木 忠 善 )
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