第32回 中部建築賞 入選・入賞 作品選評

審査総評
  中部建築賞が、長い歴史と実績をもち、地域の文化に根ざした特色ある賞であることはすでに私自身も以前から知っていた。しかし今年度その審査に加わり、改めて、この賞の意義とまたそれに応募する方々の熱意に感心した。
 一般部門、住宅部門にあわせて90点の応募案についての第一次の審査は9月18日に行われた。広い会議室をうずめつくすかのように並べられた応募資料には、審査員を圧倒するような迫力があった。建築をつくることにかけられた応募者がそれぞれの情熱と努力に、深く敬意を表するものである。第一次の審査は、審査員がそれぞれこの資料を精査した上で、投票と討論によって現地審査する作品を選ぶもので、その結果一般部門17点、住宅部門7点が選定された。現地審査は、各審査員によって分担して行われ、その結果を持ち寄って最終審査が10月16日に行われた。最終審査は現地審査の報告をふまえて全員の自由な討論によって行われた。特に一般部門の作品については、すでに他の審査員が個別に見ていたものも多くあり、討論はそうした評価も含んで活発に行われ、その結果、入賞6点、入選10点が選定された。
 数ある建築賞の中で、中部建築賞の特色として高く評価される点は、「地域社会の発展に寄与したと認められる作品を賞するものである」と明記してあるところにある。中部建築賞のこの特色は、二十世紀の終わらんとする今、建築が無国籍のファッション的デザインを脱して、それぞれの地域に根ざした性格を再び取りもどさねばならないと反省している時、さらに重要性を増してくるものとなろう。勿論、地域社会、地域文化としては何らかを、あらかじめ、言葉で定義することは不可能である。それは個々の作品の審査の中で、具体個別的にしか論じようがない。今回の審査においても、そうした議論が、様々な場合で行われたことは意義深いことであった。今後更に深まっていくことを期待したい。そうした点から見ても、今回、住宅部門の作品が、それぞれの意味で高く評価され、入賞作品と決定されたことも、喜ばしいことであった。
(香山 壽夫)

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